自身で身体を動かしたとき「その運動を自分の意思で行なった」という感覚が生じる。これを運動主体感という。この一見あたりまえの知覚の成立には、自身の運動出力と身体状態の感覚フィードバックの高度な比較が必要であり、その神経メカニズムは未だ明らかになっていない部分が多い。これは、運動主体感の定量がヒト以外の動物では難しく、動物実験による神経メカニズムの検討ができないという根本的問題に起因していた。そこで本研究では、動物実験において運動主体感を定量する行動課題を開発するとともに、実際の動物実験を通して、運動主体感の生起と異常のメカニズムを解明することを目的とした。 本研究の研究代表者は、2021年度4月1日付けで所属機関の変更を行なった。その関係で2021年度は、前年度までの研究環境からの大幅な設備の変化が生じ、研究活動には少なからず影響があった。また前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止の観点から、COVID-19以前のような柔軟な研究・実験実施は困難であった。しかし、こうした状況による研究活動への影響を鑑み、本研究は前年度末から異動などの準備を計画的に行ない、新機関での動物実験従事者登録や動物実験計画の承認などの手続きを早期に進めることで、研究活動への影響を最小限に止めるよう努力した。前年度と同様、学会年次大会等の研究発表の機会も依然として制限が残っていたものの、学会のweb開催などを活用して成果発表と資料収集、他の研究者とのディスカッションに努めた。
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