研究課題/領域番号 |
19K14489
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
杉本 光 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 特別研究員 (00829822)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 共感 / 加齢 / MRI / 会話 / 実行機能 / 外側前頭前皮質 |
研究実績の概要 |
2019年度には、「共感」を要素として含むと考えられる介入法が高齢者の認知機能に与える影響に関する神経メカニズムを解明するための予備的検討を実施した。ヒトは会話をはじめとする他者との相互作用を通して、様々な感情を抱き、多くの事象について学習する。しかしながら、従来の多くの研究では、ヒトの認知機能が社会的相互作用の中で変化するものとは仮定されておらず、共感などの社会的能力を要する会話のような社会的相互作用によって影響を受ける認知機能の心理・神経メカニズムについては不明な点が多かった。以前に実施された健常高齢者を対象とするランダム化比較試験では、グループ会話をベースとする介入法の効果が実行機能を反映する語流暢性課題のスコアにおいて認められた。この介入効果を媒介する神経基盤の候補を探索することを目的として、ランダム化比較試験の参加者の介入後の脳画像データが取得された。解析の結果、安静時のfMRIデータでは、実行機能に関連する左右の外側前頭前皮質などの脳領域間の機能的結合が介入群において統制群よりも有意に強いことが示された。また、脳構造画像データでは、右外側前頭前皮質などの脳領域の体積が介入群において統制群よりも有意に大きいことが示された。これらの結果から、実行機能において認められた介入効果には、主に外側前頭前皮質が重要な役割を果たすことが示唆された。これらの研究成果は、Society for Neuroscience(SfN)やCognitive Neuroscience Society(CNS)の年次大会でのポスター発表にて発表済であり、その成果をまとめた論文は、現在国際学術雑誌において査読を受けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述の通り、2019年度には、予備的検討におけるデータ解析を完了させ、その解析結果を国際学会で発表した。現在ではその研究成果をまとめた論文が国際学術雑誌にて査読中であることを考慮すると、本研究の一部はおおむね順調に進展していると評価できる。しかし、2019年度の後半に新型コロナウィルスのパンデミックが発生し、所属先においてヒトを対象とする実験が当面の間禁止されたことから、当初計画していた課題ベースのfMRI研究の進行に遅れが生じており、本研究の総合的な評価としては「やや遅れている」と判断するのが妥当であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度には、共感を要素として含むと考えられるグループ会話をベースとする介入法による実行機能の促進は主に外側前頭前皮質を基盤として実現されるという仮説を検証することをめざす。また、所属先においてヒトを対象とする実験が解禁された折には、当初の計画通り、課題ベースのfMRI研究を速やかに実施することをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の後半に新型コロナウィルスのパンデミックが発生し、所属先においてヒトを対象とする実験が当面の間禁止されたことから、当初計画していた課題ベースのfMRI研究の進行に遅れが生じ、次年度使用額が発生した。今後は当初の計画通りに使用する予定である。
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