研究課題
2023年度の主な研究成果としては、新型コロナウィルス感染症のパンデミックによる影響で延期せざるを得なかったfMRI実験をようやく実施することができた点が挙げられる。今後の解析によって、共感と記憶の相互作用メカニズムの基盤となる脳内機構を明らかにすることをめざす。本研究は、長引くコロナ禍のため当初の計画通りには必ずしも進まなかったものの、研究期間全体を通して、ヒトの社会性の神経基盤に関する重要な発見がいくつも得られ、世界的に高い評価を受けた。例えば、社会的報酬による記憶の促進効果を支える神経基盤を明らかにした研究の成果は、神経心理学の分野で大きな影響力をもつ国際学術雑誌に掲載された。また、語彙の豊かさと関連する脳の状態を明らかにした研究の成果は、神経言語学のトップジャーナルに掲載された。そればかりか、その論文は当該雑誌の2023年におけるEditor’s Choice article selectionに選出された。他にも、高齢者の社会的比較志向性と脳の状態との関連を明らかにした研究の成果は、社会神経科学の国際誌に掲載された。加えて、その成果を解説する論文が他の研究者によって執筆され、同誌に掲載された。さらに、共感などの社会的能力を要する会話を用いた介入法の効果を反映すると考えられる脳の状態を明らかにした研究の成果は、老年医学や加齢神経科学の国際誌に掲載された。従来の研究では、社会的相互作用場面において認知機能がどのように変化し、それがどのような神経基盤によって担われているのかについては不明な点が多かったが、前述の研究成果は、このような社会神経科学における重要な問いに答えるものであり、当該分野の発展に大きく貢献したと考えられる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Frontiers in Human Neuroscience
巻: 17 ページ: 1155194
10.3389/fnhum.2023.1155194
Current Psychology
巻: 43 ページ: 5854~5867
10.1007/s12144-023-04545-w