研究課題/領域番号 |
19K14491
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
仲田 真理子 筑波大学, 人間系, 助教 (00792409)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 行動神経科学 / 社会行動 / 集団 |
研究実績の概要 |
本研究では、脳内の分子生物学的プロセスの解析に広く用いられているモデル動物・マウスを用いて、社会的アイデンティティ形成に関わる神経基盤の一端を明らかにしたいと考えている。マウスは、集団で生活する種であり、自集団に属する個体と属さない個体を区別するという報告があることから、社会的アイデンティティの基盤となる行動・神経基盤を観察することができるのではないかと考えた。 そのためにはまず、マウスで集団形成のプロセスと集団内および集団間の社会的関係を観察しやすい行動実験パラダイムを作製することが重要である。 今年度は、所属の変更があり、ほとんど実験を行うことができなかった。初年度に作成した、マウスが集団で1つのゴール(報酬の獲得)に向かって行う集団学習課題「綱引きタスク」を繰り返して得られたデータを用いて、集団での報酬(チョコペレット)の分配について予備的な解析を行った。本タスクでは、綱引きを行うと到達できる報酬エリア12個のチョコレートフレーバーのペレットが設置されており、それを3匹のマウスで自由な割合で分け合うことができる。実験では1日1回、4~10日間程度繰り返し綱引きタスクを行わせ、並行して(実験期間中の何日か、綱引きタスクの終了後に)チューブテストを行って、3個体のグループ内におけるヒエラルキーを分析した。その結果、ヒエラルキーの変動はほとんど起こることはなかった。また、マウスが獲得した報酬の量は先行研究と同様、本タスクにおいてもヒエラルキーと関連することが明らかになった。また、綱引き作業をほとんど行わずに報酬だけを獲得する個体に着目したところ、当該個体はすべてグループ内で第一位の個体であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年4月から、所属が変わった。しかし新しい所属では実験室のアベイラビリティの関係で、2021年度中には実験に必要な機材をを設営することができなかった。そのため、1年間実験を進めることができず、進捗は前年度のデータ解析を予備的に行うのみにとどまった。そのため計画を延長し、昨年度末に計画していた本格的な計画3年目の実験は、来年度に持ち越しすることになった。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度末に計画していたように、行動実験後の脳サンプルを用いた組織学的解析を行う。 綱引きタスクを長期間繰り返した場合の集団行動の変化について、より詳細な行動解析を行う。対立綱引きタスクについても、本格的に行動実験を開始したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属の変更により今年度はほとんど実験ができず、計画していた実験は来年度に持ち越しになったため。
|