本年度は2021年度に引き続き、北海道大学の桂田氏を中心とする研究グループの一員として、Harder予想の部分的解決に尽力した。これは本研究テーマである保型形式のリフティングを応用することでなされた。 前回の研究では、Harder予想より強く、けれども扱いやすいと考えられる予想も定式化し、そちらの予想をいくつかの場合に確かめることにより、Harder予想をいくつかの個別の場合に証明することができた。本年度の研究では、この新しい予想を緩い条件のもとで証明することに成功した。当初、この条件の中には確認するのが難しいものも含まれていた。しかしながら、桂田氏との議論の末、これらの条件を改良し、全ての条件が簡単に確かめられるものとなった。結論として、前回よりも多くの場合にHarder予想を示すことができた。 研究期間全体を通して、共著を含めて10本の論文を執筆した。それの内容は「局所Aパケットの構成」、「局所新形式」、「Harder予想」の三つに分類できる。Harder予想はモジュラー形式のHecke固有値の合同問題であり、これの部分的解決にはモジュラー形式のリフティングが鍵となっていた。これはレベル1という条件のもののみを考えれば良かったが、高レベルでの同様の研究のために必要となるのが、局所Aパケットの具体的な構造と局所新形式の理論である。前者については想定以上の結果が得られた。これについて、今後多くの研究に応用されるだろう。後者についてはいくつかの新しい結果・アイデアは得られたが、応用のためには、現段階では理論の整備が足りていない状況である。こちらは今後の研究課題としたいと考えている。
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