研究実績の概要 |
ある種の性質の良いアーベル圏上の傾斜対象が導来同値を導くことはよく知られているが, 2020年度はこの古典的な結果を導来因子化圏へ拡張する研究を行った. その結果, 滑らかな代数多様体や大域次元有限の多元環上の同変傾斜対象が導来因子化圏の間の同値を誘導することを証明した. これは, Okonek--Telemanの結果の一般化を与えるものである. また, この結果とKnorrerの周期性と呼ばれる圏同値とを組み合わせることで, 滑らかな射影多様体の正則な切断で得られるような多様体の連接層の導来圏が, ある非可換ゲージ化Landau--Ginzburg模型の導来因子化圏と同値になることを示した. 特に, Rennemo--Segalの結果を用いることで, Pfaffian多様体の線形切断の非可換特異点解消の導来圏が, あるシンプレクティック群の表現に付随する非可換ゲージ化Landau--Ginzburg模型の導来因子化圏と同値になることを示した. 上の結果により特に, Calabi--Yau超曲面上の連接層の導来圏は非可換ゲージ化Landau--Ginzburg模型の導来因子化圏と同値になるが, これによりHalpern-Leistner--Samにより構成されたCalabi--Yau超曲面上の連接層の導来圏への弦理論的ケーラー・モジュライ空間の基本群の作用を, 非可換代数の表現を用いて理解することが可能になると期待している. より具体的には, その群作用を非可換代数上の同変傾斜加群が誘導する圏同値の合成で記述することで, 同変傾斜理論を用いて群作用を調べることが可能になると期待している.
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