研究実績の概要 |
本研究の主な研究成果は二つある. 一つ目の成果は, 任意の3次元フロップ収縮に付随する三角圏上のBridgeland安定性条件のなす空間を, ある種の正則被覆空間として記述したことである. これは, グラスゴー大学のWemyss氏との共同研究によるもので, 当初の研究の目的の一つを達成するものである. 3次元フロップ収縮に付随する三角圏上のBridgeland安定性条件のなす空間は, これまでは限定的な場合でしか完全な記述はされていなかったが, 本研究では伊山--Wemyssにより近年発展した非可換代数の表現論を用いた新たな手法によって, 一般の場合の記述に成功した. 二つ目の成果として, グラスゴー大学の原氏と共同で, Halpern-LeistnerとSamによって構成された, 擬対称表現に付随するGIT商の連接層の導来圏上の基本群作用が, 伊山--Wemyssによって導入された変異と呼ばれる操作によって誘導される導来同値を用いて記述できることを示した. これは, 伊山--Wemyssの理論が4次元以上の場合でも有用であることを示す新たな例を与えるものである. これら二つの成果は, いずれも伊山--Wemyssの理論を応用した研究であり, その理論が新たな研究手法として有用であることを示す意味でも意義のある研究であったといえる. また, これら二つの研究成果以外にも, 名古屋大学の大内氏と共同で, 楕円曲線上の連接層の導来圏の素thick部分圏と呼ばれるある種の部分三角圏を分類し, その上の松井スペクトラムと呼ばれる位相空間を決定したり, 本研究が始まる前に大内氏と共同で行った研究を改良し, 鎖型多項式の同変行列因子化圏が傾斜対象を持つことを証明した.
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