研究課題/領域番号 |
19K14505
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
土谷 昭善 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員 (30836953)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 格子凸多面体 / 正規性 / 反射的凸多面体 / Ehrhart多項式 / unimodal性 / γ-positive性 / real-rooted性 |
研究実績の概要 |
格子凸多面体に含まれる格子点の数え上げに関する研究は組合せ論だけでなく可換環論や代数幾何学といった様々な分野に現れる基本的かつ重要な研究である.当該研究目的は特に正規反射的凸多面体に焦点を当て,Stanleyのunimodal予想,小田予想,そしてGal予想から派生される問題の解決を目指すものである. 今年度の研究では関西学院大学の大杉英史氏との共同研究により,カクタスグラフのサスペンションに付随するPV型隣接凸多面体のh*多項式の公式をマッチング生成多項式で与えた.特に,その公式からPV型隣接凸多面体と化学的グラフ理論に登場するμ多項式との関連を発見し,そのh*多項式がreal-rooted性を持つことを証明した.real-rooted性はunimodal性よりかなり強い性質であり,一般にPV型隣接凸多面体のh*多項式はreal-rooted性を持つとは限らないため,カクタスグラフのサスペンションといったグラフのクラスがPV型隣接凸多面体において非常に貴重であることがわかった.またPV型隣接凸多面体は近年,その正規化体積と蔵本モデルとの関連が発見され,その注目度は上がっているため,正規化体積の情報を含むh*多項式の公式の発見は重要である. また大杉英史氏との共同研究によりジョイングラフに付随するPQ型隣接凸多面体のh*多項式の公式を与えた.特に,車輪グラフに付随するPV型隣接凸多面体の正規化体積の明示的な公式を与えており,Chen-Davisの予想を肯定的に解決した.PV型隣接凸多面体もその正規化体積とpower-flow studyとの関連が発見されており,PQ型隣接凸多面体のh*多項式の公式の発見は重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PV型隣接凸多面体のh*多項式に対してunimodal性に関するもので最も強い性質であるreal-rooted性をもつグラフのクラスを発見するなど反射的凸多面体のh*多項式のunimodal性に関する結果を着実に得ており,さらに化学的グラフ理論といった他分野との関連を発見するなど,今後の研究の発展が大きく見込まれる.
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今後の研究の推進方策 |
一般のグラフに対するPV型隣接凸多面体のh*多項式及び正規化体積の公式はまだ得られていないため,その公式を付随するグラフの言葉で与えることを目指す,さらにその公式を用いてPV型隣接凸多面体のh*多項式はγ-positiveになるという予想の解決を目指す.またStanleyのunimodal予想と関連してPQ型隣接凸多面体のh*多項式がunimodalであることの証明を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により海外及び国内での研究集会の参加および研究打ち合わせの実施ができなかったため次年度使用額が生じた.翌年度は予定より長期で国内及び国外の研究機関に滞在し研究打ち合わせを行うことで助成金を使用する.
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