研究課題/領域番号 |
19K14509
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐野 太郎 神戸大学, 理学研究科, 助教 (10773195)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 代数幾何学 / Calabi-Yau多様体 |
研究実績の概要 |
Calabi-Yau多様体の有界性問題に取り組むため、ケーラーとは限らない設定でCalabi-Yau多様体を対数変形で構成する問題に取り組んだ。橋本氏との共同研究で構成したケーラーでないが第2ベッチ数が任意に大きくなるCalabi-Yau多様体の代数次元が1や0を取りうることがわかった。代数次元2の例が作れるかどうかはまだ不明である。また、高次元で同様の例が作れるかどうか、構想中である。また関連した話題として、高次元Calabi-Yau多様体で自己同型群が無限になるものは存在するが、構成が非自明であったり、構成できたとしても我々の構成には使いにくい。我々の構成では有理的な3-foldの超曲面として現れるK3曲面の自己同型で3-foldの自己同型からは誘導されないものを使っていたが、そのような例が3次元以上だと構成が難しくなる。実はそのようなambient spaceの自己同型から誘導されない超曲面の自己同型はあまりないのではないか、という予想も立てている。同じような方法でケーラーでない正則symplectic多様体が構成できるかも画策している。 また、我々の構成した例の微分幾何的な性質も興味深い。バランス計量やHodge対称性が成り立つかどうかにも取り組んでいる。Clemens-Friedman 3-fold上でddbar補題が成り立つことが最近証明されたが、それを応用することで示せないか画策している。 また、Tasin氏と重み付き超曲面に関する議論も進行中である。トーリック多様体の変形についても、Fano多様体のモジュライ空間の具体的記述において面白い現象が見つかることを期待している。Calabi-Yau多様体の退化についても研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はケーラーでないCalabi-Yau多様体の構成の宣伝は十分にできたものの、その後の進展という訳にはいかなかった。本来の目標であるCalabi-Yau多様体の有界性問題は重要な問題であるが、最近の進展は少なく、独自の蓄積が必要であると思う。文献などでの情報収集に本年度は終始してしまったが、次年度以降の進展に期待する。また、Tasin氏や伊藤氏との議論で新たな知見はもたらされているが、論文になるところまでは行っていない。しかし個人的には興味深いテーマであり新規性もあるので、成果として結実させたい。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究者と引き続き議論を続け、Calabi-Yau多様体の有界性やFano多様体のモジュライ空間の境界部に関する成果を得たい。Toric多様体の変形に関しては、いまだに特別な例しか扱えていないので、扱う例の数を増やして新しい例が見つかることを期待する。Tasin氏との議論では部分的な結果なら得られそうな状況であるので、なんとか成果が公表できるところまでオンラインでの議論を通じて進展を図る。Calabi-Yau多様体の有界性問題もSvaldi氏などとの議論を通じ、進展を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響によりいくつかの出張が中止となり、またいくつかの出張で本科研費を使用予定であったが、先方負担や別の科研費による支給が可能になったため。使用計画としては、オンラインでの研究打ち合わせに必要なパソコンやタブレット類などの環境整備、コロナウイルスの不安定な状況が安定した場合には、研究打ち合わせのための出張費などにあてることを計画している。
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