研究実績の概要 |
支配次元が2以上かつ大域次元が2以下となる多元環を Auslander 多元環とよぶ. Auslander 多元環と有限表現型の多元環との間には一対一対応( Auslander 対応)があるため, Auslander 多元環は多元環の表現論において重要な多元環のクラスと考えられる. Crawley-Boevey--Sauter は多元環の支配次元が2以上となることの必要十分条件を傾加群を用いて与え, その系として大域次元が2の多元環が Auslander 多元環となる特徴付けを傾加群によって与えた. 他方, Iyama によって忠実ねじれ類と相対 Auslander 多元環の間の一対一対応が与えられた. 相対 Auslader 多元環は, 大域次元が2以下であり, Auslander 多元環の一般化の一つである. そこで該当年度では, 大域次元が2以下の多元環が相対 Auslander 多元環となる必要十分条件を傾加群を用いて与えることを動機とし, 上記の Crawley-Boevey--Sauter の定理の一般化を与えた. 昨年度までの研究において, 大域次元が2以下の多元環は強準遺伝多元環となることを証明した. 相対 Auslander 多元環の大域次元は2以下であるため, 強準遺伝多元環となる. 他方, Ringel によって両側強準遺伝多元環の大域次元が2以下となることが知られている. そこで該当年度に与えた定理の系として, 相対 Auslander 多元環が両側強準遺伝多元環となる十分条件を傾加群を用いて与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
両側強準遺伝多元環は強準遺伝多元環の特別なクラスである. また大域次元が2以下の多元環は強準遺伝多元環であり, 両側強準遺伝多元環の大域次元は2以下である. しかし一般にこれらの主張の逆は成り立たない. そこで, 大域次元が2以下の多元環と両側強準遺伝多元環の間にはどれくらいの隔たりがあるのかを調べることを研究課題の一つとしている. 該当年度では, 相対 Auslander 多元環について考察し, 相対 Auslander 多元環が両側強準遺伝多元環となる十分条件を与えることに成功したため.
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