研究実績の概要 |
大域次元が有限な多元環は可換環論における正則環の非可換類似であり, 多元環の表現論においても重要なクラスとして位置付けられている. そこで本研究課題では, 大域次元が有限な多元環の実現を与えることを主目的としている. 他方, 準遺伝多元環は Cline--Parshall--Scott によって導入された大域次元が有限な多元環のクラスである. 準遺伝多元環の構成方法として, 次に述べる Dlab--Ringel の標準化法が知られている. 標準加群のように振る舞うアーベル圏上の対象の集合を標準化可能集合という. Dlab--Ringel は標準化可能集合を含む拡大で閉じたある部分圏の射影生成元の自己準同型環として準遺伝多元環が得られることを示した. より一般に, Dlab--Ringel の標準化法によって standardly stratified 多元環を構成できることが知られている. 2021年度は, Dlab--Ringel の標準化法の一般化を与えた(山口大学の足立崇英氏との共同研究). つまり, standardly stratified 多元環を含むクラスである mixed stratified 多元環の構成を Dlab--Ringel の標準化法に倣って与えた. Extriangulated 圏は完全圏(アーベル圏)と三角圏の共通の一般化として Nakaoka--Palu によって導入された概念である. 本研究では, extriangulated 圏上に混合標準化可能集合を標準化可能集合の一般化として定義し, これを用いて mixed stratified 多元環を構成した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の主目的である大域次元が有限な多元環の実現について, 今後は次の方策で研究を進める. 標準化可能集合を含む拡大で閉じたある部分圏が加法生成元を持つとき, その加法生成元の自己準同型環は準遺伝多元環となることが Xi によって示されている. そこで今後は標準化可能集合を適切に一般化し, これを含む拡大で閉じたある部分圏の加法生成元の自己準同型環として大域次元が有限な多元環を構成することを目指す.
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