研究実績の概要 |
本研究課題の目的は大域次元が有限な多元環の構成を与えることである. 2023年度は, 2022年度から引き続き, 大域次元が有限な多元環のクラスである準遺伝多元環の構成に着目し研究を行った. 特に, 自己準同型多元環 End(M) が準遺伝多元環となるために加群 M が満たすべき条件について考察した. Iyama と Reiten はある団傾対象の自己準同型多元環が準遺伝多元環となることを示した. Iyama--Reiten の研究に現れる団傾対象は直和因子として単純加群を含み, このことが団傾対象の自己準同型多元環が準遺伝多元環となることを示す上で重要な役割を果たす. 他方, 2020年度に行った弱削除鎖と大域次元有限な多元環に関する研究で得た知見によって, 単純加群を直和因子として含む良い自己直交加群の自己準同型多元環の大域次元は有限となることがわかった. そこで, 2023年度は単純加群を直和因子として含む加群に着目し, 自己準同型準遺伝多元環の構成について研究を行った. Iyama--Reiten の構成の類似として, 単純加群を直和因子に含む良い2リジッド加群の自己準同型多元環が準遺伝多元環となることを証明した. 準遺伝多元環上の特性傾加群は, 上述の単純加群を直和因子に含む良い2リジッド加群である. 従って, 今回得られた結果は Ringel dual(準遺伝多元環の特性傾加群の自己準同型多元環)を含む自己準同型準遺伝多元環の構成である. また, 2021年度に得られた結果(準遺伝多元環を含むクラスである mixed stratified 多元環の構成を Dlab--Ringel の標準化法に倣って与えた)については, Journal of Algebra に掲載された.
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