研究課題/領域番号 |
19K14517
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
柴田 大樹 岡山理科大学, 理学部, 助教 (90804055)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スーパー代数群 / ボレル・ヴェイユの定理 |
研究実績の概要 |
当該年度は基盤研究として,有限次元スーパー代数群の構造及び表現論の研究を行った.具体的には有限次元スーパー代数群のうち広いクラスを占める準簡約スーパー群に関して,次の二点の成果を上げた.(1)その閉部分スーパー群であるトーラスやボレル部分群を,非スーパーのときの類似として然るべく定義し性質を丁寧に調べた.(2)これらの特別な閉部分スーパー群らの表現を考察することにより,元々のスーパー群の既約表現を全て構成する事ができた(ボレル・ヴェイユの定理).この結果の意義はこれまで個々のスーパー群で独立して研究されていた内容を,本研究ではホップ代数の手法を用いることにより見通しの良い統一的な記述をすることを可能にしたところにある.さらに基礎体に課されていた代数的閉体などの仮定を外すことができた. この研究で重要な結果は,ボレル部分群の選択の自由性にある.これまでボレル部分群は具体的な行列表示を考えたうえで,上三角もしくは下三角という特殊なものだけが研究されてきた.非スーパーのときとは違い,スーパー・リー代数において,ワイル群での作用でボレル部分代数らは互いに移り合わず,そのことがスーパーの表現論(指標公式など)をより複雑かつ興味深いものにしている.スーパー代数群のレベルにおいても同様の現象が起きていると予想されるが,本研究の成果によりボレル部分群が系統的に扱えることになったので,この方面の研究に対して重要な一歩が踏み出すことができたことになる. また代数群の表現論を調べるうえで,群上の積分が重要な役割を果たす事はよく知られている.増岡彰氏(筑波大学)と島田祐太氏(筑波大学)との共同研究により有限次元スーパー代数群上の積分に関しても,その存在性や性質に関する成果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は無限次元スーパー代数群の構造論および表現論を開拓することが目標である.当該年度はその基礎研究として,有限次元スーパー代数群の構造論および表現論に関して成果を上げることができた. 特に,準簡約スーパー群に関してその構造を明らかにし既約表現を構成することができた.これらの結果は論文として纏め既に国際ジャーナルへの掲載が決まっている.また筑波大学の増岡氏と島田氏との共同研究によりスーパー代数群上の積分の性質に関しても成果を上げることができた.この結果はプレプリントとして arXiv に掲載しており,既に国際ジャーナルに論文を投稿している.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究で,現段階では有限次元スーパー代数群の構造論や表現論の基礎がまだ十分に整っていないという事実が明らかになった.特に,非スーパーの場合のワイル群のような,ボレル部分群たちをコントロールできる比較的扱いやすい対象のスーパー類似物を然るべく構成するという課題がある.これは構造を明らかにするだけでなく既約表現の指標公式の簡明な記述を与えることが期待される. 無限次元スーパー代数群の構造論や表現論の研究へとスムーズに繋げるために,有限次元の場合の上記のような課題を解決する.同時に森田純氏(筑波大学)とA.Pianzola氏(University of Alberta, CANADA)と共同研究を進めているカッツ・ムーディ群の中心拡大原理に関する論文(2編)の投稿準備を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,日本数学会2020年度年会(於日本大学)が新型コロナウイルス感染症により中止したことにより,予定されていた当該研究集会への旅費が返金されたことによる.次年度も引き続き研究集会に参加するための旅費を十分に使用することができなくなる可能性がある.現在,多くの研究集会は情勢を鑑みてオンラインで行われることが増えてきた.そこで次年度はウェブカメラや液晶タブレットなどPC周辺機器を購入することで,研究のオンライン環境を整えたい.
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