研究課題/領域番号 |
19K14525
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
正井 秀俊 東京工業大学, 理学院, 助教 (40735734)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | タイヒミュラー空間 / 曲線複体 / 繰り込み体積 / Weil-Peterrson 幾何 |
研究実績の概要 |
本年度は3次元双曲多様体とタイヒミュラー理論の関わりについて研究した.3次元双曲多様体の繰り込み体積と呼ばれる量を用いて,タイヒミュラー空間の「幾何」を調べる手法について研究した.繰り込み体積から得られるタイヒミュラー空間の幾何を本研究の主題の一つである写像類群上のランダムウォークと関連づける研究を行っている.また関連してタイヒミュラー空間のWeil-Petersson 距離についても研究した.タイヒミュラー空間のWeil-Petersson 距離と繰り込み体積の比較は現在発展中の数学であり,多様な数学との関連が見えてきた.特にWeil-Petersson 距離のCAT(0)幾何学が繰り込み体積による幾何との興味深い関連を持つことなどもわかってきた.この研究は予想外の広がりを見せたことに加え,新型コロナウイルス感染症による様々な困難のため,2020年度にまとめ切ることができなかった. また,タイヒミュラー空間の幾何の離散化といえる,曲線複体について,様々な性質を抜き出す商空間を考え,論文「Quotients of the curve complex」をニューヨーク市立大学のJoseph Maher氏,ウォーリック大学のSaul Schleimer氏と共同で執筆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在研究中の繰り込み体積とWeil-Petersson 幾何の研究は多様な数学が関連する豊かな分野である.本来ならば,研究集会などで専門家との議論を通して,様々な情報収集,特に話題の定まらない雑談によって感覚を養い,研究していきたいところであったが,新型コロナウイルス感染症対策により,ほぼ全ての研究集会がオンライン開催となり,「重要であるが,わざわざアポイントメントを取るほどでもない」ような議論の時間が全くなくなり,徐々に研究に支障が出てきている.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きタイヒミュラー空間の繰り込み体積による幾何と,Weil-Petersson 幾何の関連について研究していく.これらの二つの幾何は多くの先行研究があり,現在考えている視点との関連について調べていく.また,写像類群上のランダムウォーク,そしてランダムウォークにより生成されるランダム3次元多様体の統計学について,タイヒミュラー空間の繰り込み体積による幾何と,Weil-Petersson 幾何を用いて研究していく.新型コロナウイルス感染症対策による不自由の中,これらの数学について,研究者が集まり,議論をする機会を得る方法についても模索していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症対策でほぼ全ての研究集会がオンラインとなり,旅費が必要なくなったため.本年度は対面での研究集会が実施されることが期待されるため,参加旅費として繰り越した予算を使用していく予定である.
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