研究課題/領域番号 |
19K14526
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
本田 淳史 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (90708611)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光的超曲面 / 波面 / フロンタル / 特異点 / 凸超曲面 / 4頂点定理 / Zakalyukinの補題 / 交差帽子 |
研究実績の概要 |
ローレンツ多様体内の正則超曲面に対し,その接空間が光的部分空間であるような点を光的点という.光的点は,超曲面の第一基本形式(誘導計量)の退化点として特徴づけられ,計量の特異点とみなされる.超曲面の任意の点が光的であるとき,その超曲面を光的超曲面という.研究代表者は先行研究において,光的超曲面に対して光的完備性を導入し,光的エネルギー条件を満たすローレンツ多様体内の光的完備な光的超曲面は全測地的超曲面に限るというCalabi-Cheng-Yau型定理を示していた.一方,特異点を許容すると全測地的でない光的超曲面が豊富に存在するため,光的超曲面の非自明な大域的性質は,特異点を許容した枠組みで調べることが自然である.研究代表者は,赤嶺新太郎氏(日本大学),梅原雅顕氏(東京工業大学),山田光太郎氏(東京工業大学)らとの共同研究で,(n + 1)次元ローレンツ・ミンコフスキー空間の光的波面に対して光的完備性を導入し,光的完備な光的波面は,n次元ユークリッド空間の波面と対応付けられるという基本定理を示した.さらにその応用として,nが3以上のとき,完備な光的波面(特異点集合がコンパクトかつ光的完備である光的波面)は,n次元ユークリッド空間の閉かつ凸な正則超曲面から得られることを示した.一方 n = 2 の場合,平面でない完備な光的波面でエンドが埋め込みであるものは,カスプ辺でない特異点を少なくとも4つもつことを示した.これは古典的な4頂定理の曲面版とみなされる結果である.また,梅原雅顕氏(東京工業大学),山田光太郎氏(東京工業大学),佐治健太郎(神戸大学),直川耕祐氏(広島工業大学)らとの共同研究で,波面の場合に知られていたZakalyukinの補題をフロンタル(波面的曲面)や交差帽子をもつ曲面に一般化し,その応用として曲面の特異点における対称性を決定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
完備な光的波面の構造を決定したことに加え,凸超曲面との対応を明らかにし,低次元の場合には4頂点型定理を導くことができた.さらに, Zakalyukinの補題のフロンタルや交差帽子への一般化も導くことができ,順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
現在,ローレンツ空間型(ド・ジッター空間,反ド・ジッター空間)の完備な光的波面を研究中である.ローレンツ・ミンコフスキー空間のような平坦な空間の光的波面と,非平坦な場合では異なる大域的性質を持つことが予想される.また,曲率有界性の仮定を外した一般の混合型曲面に対するガウス・ボンネ型の定理を目指して,曲率積分の発散項と混合型曲面の光的点における不変量(光的特異曲率,光的法曲率)との関係を引き続き調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた出張や海外渡航が新型コロナウイルスの影響で中止となった.それに代えて国際研究集会「Workshop on Surface Theory-UY60-」をハイブリッド形式で開催し,通信機材や,会場費に使用したが,2022年度に延期となったものもあり,その旅費等にも充てる予定である.
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