研究課題/領域番号 |
19K14527
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
赤嶺 新太郎 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (50825148)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 極大曲面 / 光的境界値問題 / 鏡像の原理 / 光的超曲面 / 光的完備性 / Calabi-Bernstein型定理 / ローレンツ幾何 |
研究実績の概要 |
平均曲率零曲面の諸理論の統合と計量の符号数に応じた幾何学的性質の探求の研究の一環として,本年度は主にミンコフスキー時空内の空間的極大曲面や光的超曲面に関する研究を行い,つぎの研究成果を得た.
1. 前年度までに本田淳史氏(横浜国立大学),梅原雅顕氏(東京工業大学),山田光太郎氏(東京工業大学)との共同研究で「空間的平面全体で定義された関数のグラフとして表される極大超曲面は平面に限る」という極大超曲面に対するCalabi-Bernstein型定理を曲面の計量が退化する光的点を許容した形に拡張した.これらの研究成果を踏まえ,本田氏,梅原氏,山田氏とともにナル・エネルギー条件を持つローレンツ多様体内で光的完備な光的超曲面は全測地的なものに限ることを証明し,その応用として「ミンコフスキー時空内の光的超曲面で,空間的平面全体で定義された関数のグラフとして表されるものは平面に限る」という光的超曲面に対するCalabi-Bernstein型の定理の証明を与えた.結果を取りまとめて,今年度に論文として出版した.さらに本結果を踏まえ,光的超曲面の特異点を含めた枠組みでの考察を開始した.
2. 藤野弘基氏(名古屋大学)と3次元ユークリッド空間内の極大曲面と3次元ミンコフスキー時空内の極小曲面の境界値問題の双対性に関する研究を継続して行い,前年度までの研究で得られた極大曲面の境界に現れる光的線分に関する鏡像の原理に関する結果を論文として取りまとめ出版した.本研究では,3次元ユークリッド空間内の極小曲面と3次元ミンコフスキー時空内の極大曲面の間にある双対性と呼ばれる一対一対応を用いて,それらの曲面の対称性の対応を考察し,境界値問題を解くための新しい方法を模索した.本年度は曲面の対称性の対応を見直して,特定の境界値問題を関数論的に捉える方法の考察を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は新型コロナウイルスの流行により,予定していた出張が中止になるなどの進捗上の影響が一部あったが,光的超曲面の研究では大域的な構造に関する結果や特異点を許容した光的超曲面の研究についての一定の知見や方針が得られた.また,極大曲面と極小曲面を双対性を用いて同時に捉える研究についても,オンラインでの研究成果の発表や研究交流により,対称性を用いて特定の境界値問題を具体的に解く方法に関する知見やアイデアを得ることで次年度以降の研究を見据えた一定の進捗が得られたため.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ,光的超曲面の特異点を含めた枠組みでの研究を推進する.また,極大曲面と極小曲面の双対性に関する研究については対称性の高い曲面を具体的に構成する方法も含め,対称性に着目した研究を行う.その一方で,前年度に行うことができなかった不定値計量を持った時間的極小曲面についても,論文として取り纏めることを目標に研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた出張が新型コロナウイルスの影響で中止となったため,次年度使用額が生じた.次年度に出張ができる状況であれば旅費として,そうでなければ次年度以降に必要な物品等を購入することに使用する.
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