研究課題/領域番号 |
19K14528
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
湯淺 亘 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(PD) (80824961)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スケイン代数 / クラスター代数 / 色付きジョーンズ多項式 / 量子不変量 |
研究実績の概要 |
点付き境界を持つ曲面上のクラスプ付きスケイン代数と量子クラスター代数について、リー代数 sp_4, g_2 の量子群に付随する場合に関して研究を行なった。sp_4 については境界弧で局所化したクラスプ付きスケイン代数から量子クラスター代数への埋め込みの構成と elevation-preservng と呼ばれるクラスのスケイン元における positivity の証明を行い論文として執筆している。 g_2 の場合は部分的な対応が得られており、現在進行中である。 また、点付き境界を持つ曲面におけるクラスプ付きスケイン代数と被約版ステイト付きスケイン代数の間の同型写像(ステイト-クラスプ対応)の構成を sl_3, sp_4 の場合に行った。sl_2 の場合には Le-Yu によりステイト-クラスプ対応が与えられている。sl_3 のステイト付きスケイン代数は Higgins により定義されているが、その被約版の構成は本研究で行った。 sp_4 のステイト付きスケイン代数とその被約版は今回の研究で与えた。また、向き付け可能な3次元多様体においてもステイト-クラスプ対応を考えた。これらの研究は石橋典氏との共同研究である。 この他に、石橋典氏、狩野隼輔氏との共同研究で壁付き曲面のスケイン代数という新たなスケイン代数を定義して、ラミネーションに付随する係数付きクラスター代数との対応を構成した。単独の研究としては色付きジョーンズ多項式の tail の研究について sp_4 の場合に基本表現の n 倍の最高ウェイトを持つ色付きジョーンズ多項式の計算を (2,p)-トーラス絡み目に関して行った。そして、その極限から得られる tail の明示式を与えた。 これらの研究結果に関して、低次元トポロジー、無限可積分系、表現論に関連する研究集会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究で sl_3 の線形スケイン理論以外に、sp_4 や g_2 などの rank 2 のリー代数に関して線形スケイン理論を用いた研究が進んでいる。 結び目の tail に関しては新たに sp_4 で量子スピンネットワークを用いて (2,p)-トーラス結び目の tail の一つの具体的な公式を得た。 クラスプ付きスケイン代数と量子クラスター代数の関係に関しては、sp_4 について sl_3 で前年度に得られた結果と同様の結果を得ることができた。g_2 の場合に関しては、より複雑になるため同様の結果が得られるかは不明であるが、現時点で部分的に対応する結果が得られている。また、sl_n においても研究を進めている。 これらに関しては前年度の予定していた範囲の進展である。前年度に予定していた以外の進展としては、これまで扱っていなかったステイト付きスケイン代数についても sp_4 や g_2 で研究を進めることができた。さらに、係数付きクラスター代数に対応する壁付き曲面のスケイン代数という新しい対象を導入して研究を進めることができた。 以上の進展から計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
結び目の tail の研究については sp_4 における Andrews-Gordon type の恒等式を (2,p)-トーラス絡み目の sp_4 色付きジョーンズ多項式の計算から得ることを目標とする。恒等式の片側である量子スピンネットワークを用いた公式はすでに得られているので、もう一方の線形スケイン理論から得られる公式を求める。そのために、sp_4 ウェブにおけるバブルスケイン関係式やフルツイスト公式の導出を行う。 クラスプ付きスケイン代数と量子クラスター代数の対応については、g_2 の場合に得られている部分的な結果を発展させまとめる。また、A_n型やC_n型など一般のスケイン代数へと研究を進める方針を考える。また、ステイト-クラスプ対応を用いて3次元多様体のスケイン代数に関連する研究も進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、出張を行えなかったため次年度使用額が発生した。
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