研究課題/領域番号 |
19K14530
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
吉田 建一 埼玉大学, 理工学研究科, 研究員 (70793371)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 錐構造 / 指標多様体 / トーラス上の絡み目 |
研究実績の概要 |
有限体積3次元双曲多様体にはモストフ剛性があり、位相から等長類が決まる。しかし、完備でない構造によって変形できる場合がある。本研究では、完備でない双曲構造の変形に基づいて、3次元多様体の基本群の表現空間を幾何学的に考察している。錐多様体の連続変形による双曲的デーン手術の実現が代表的な例であるが、さらなる一般化を目指す。 3次元双曲錐多様体の大域的な剛性は錐角がπ以下の場合に知られていて、このことは錐角を0まで減少させる変形が存在することにより証明される。昨年度は、錐角がπと2πの間にある場合に、錐角が減少するにも関わらず退化する例をトーラス上の絡み目から得た。双曲錐構造はある多面体の貼り合わせによって具体的に構成でき、その双曲的な多面体の等長類を決定することに帰着できる。ここで、退化は特異集合が交差することによって起こる。 本年度は引き続き、3次元双曲錐多様体の変形を考察した。そこで、変形の際の特異集合の交差を回避するために、錐構造の一般化となる穴あき錐構造を定義した。上記の例に対しては、2πより小さい任意の錐角を実現できるようになる。穴あき錐構造は、双曲構造に限らず定曲率の幾何構造でも同様に定義できる。また、穴あき錐構造のホロノミー表現を錐構造と同様に定義することができ、既約なホロノミー表現の変形に対応して穴あき錐構造を変形させることができることを示した。この一般化により、基本群の表現を幾何学的に表すことができる範囲が増えるので、錐構造の大域的な剛性を考察する上で役立つと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
穴あき錐構造を定義して、基本的な結果は得ることができた。しかし、剛性などの期待していた性質を示すのに難航している。
|
今後の研究の推進方策 |
穴あき錐構造について、具体例と一般的性質を微分幾何的に考察する。3次元球面内の任意の結び目が錐角2πの球面穴あき錐構造を許容するので、結び目理論との関連も検討する。トーラス上の絡み目についても引き続き考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により出張ができなかったため、次年度使用額が生じた。2021年度においても移動が制限される見込みなので、物品購入に使用する予定である。
|