研究課題/領域番号 |
19K14533
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寺本 圭佑 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 学術研究員 (10830002)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フロント / フロンタル / 混合型曲面 / ガウス写像 / 主曲率 / リバクール変換 |
研究実績の概要 |
本年度は、特異点を持つ曲面であるフロントやフロンタル、3次元ローレンツ空間内の軽量に特異性を持つ曲面である混合型曲面に対して次の結果を得た。 1.フロントに基本的に現れる特異点であるカスプ辺の周りでガウス曲率が非零で有界な場合、対応するガウス写像もその点で特異性を持つ。このような場合に、ガウス曲率の符号とガウス写像の持つ特異性についての研究を行った。ガウス写像がカスプ辺に対応する点で折り目でない非退化な特異点を持つとすると、ガウス曲率の符号と特異曲率の符号が逆の値になることを示した。また、ガウス写像がカスプ特異点を持つとき、その符号についての研究を行い、特異曲率の符号との対応を示した。 2.3次元ミンコフスキー空間内の平均曲率が零一定である極大曲面や平均曲率が非零で一定な曲面に対してそれらを与える表現公式が知られている。また、一般にそのような曲面には特異点が現れることが知られている。これらの表現公式を持つ曲面を3次元ユークリッド空間内のフロンタルと考え、特異点における幾何学的不変量の考察を行い、第一種特異点においては特異曲率が常に負になることを示した。 3.非フロント特異点を持つフロンタル曲面の主曲率関数の挙動を幾何学的不変量を用いて調べた。特に、純フロンタル特異点を持つ場合、特異点集合が曲率線となる条件や臍点が孤立する条件などを示した。さらに曲率線枠の概念を導入し、フロンタルのリバクール変換の定式化を行った。 4.混合型曲面上の第一種光的点集合は、空間的曲線をなす。この曲線に沿った枠を用いて定義される不変量を用いて混合型曲面と光円錐、光的平面との接触度合いの特徴づけを行った。また、関連して得られる光的曲面に現れる特異点の特徴づけを与えた。一方、これまでに定式化した不変量である光的特異曲率と平衡曲率の意味付けを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガウス曲率がカスプ辺の近くで有界な場合、ガウス曲率の符号と特異曲率の符号の関係をガウス写像の特異性を用いて特徴づけることができた。ガウス写像に現れるカスプ特異点の符号と特異曲率の符号の関係を示したことで、カスプ辺の持つ幾何学的性質を明らかにできた。また、ある表現公式を持つフロンタルの研究においては、結果としてこの表現公式を用いることでガウス曲率、特異曲率が共に負になるフロンタルの構成ができることが分かった。これは、有界なガウス曲率を持つフロンタル曲面に対する興味深い結果であるといえる。さらに、フロントではないフロンタル特異点を持つ曲面の主曲率関数の挙動を調べることで、これらの曲面の中で曲率線座標が取れるものの存在が示せた。この結果は今後の研究で重要な役割を果たすものと考えられる。混合型曲面に対しても、光的特異曲率や平衡曲率と測地的曲率との関係を明らかにしたり、3次元ミンコフスキー空間内のある種のモデル曲面との接触具合についての考察を行うことで、混合型曲面に対して微分幾何学、特異点論双方からの理解が深まったと考えられる。 以上のことから、研究計画に沿った部分とそれ以外に新たに分かった部分もあるが、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究計画に従ってフロンタルや混合型曲面の幾何学的性質の研究を行う。 フロント、フロンタルの幾何学的性質お研究に関しては、非零で有界なガウス曲率を持つフロントのガウス写像に着目し、ガウス写像の特異値集合(球面上の曲線としてのフロント)の幾何学的及び位相的性質の関係を調べる。また、元のフロントの幾何学的性質、位相的性質の関係をガウス・ボンネ型定理などを適用することで明らかにしていく。さらに、フロンタル曲面に対しては、その曲率線座標や曲率線枠を用いてリバクール変換を定式化したが、変換に現れる特異点の特徴づけを調べる。このとき、初期フロンタルの幾何学的性質との関係も明らかにする。また、非フロント特異点の周りにおける曲率線や漸近線等の模様について調べる。 一方、混合型曲面に対して、第一種でない非退化な光的点の周りにおける幾何学的性質を調べる。これらの光的点においては、現状で適切な不変量が定義できていないため、光的点の像に沿った適切な動標構を設定し、それに付随して得られる不変量を明らかにする。また、ガウス曲率が有界にはならないが、その面積要素との積を考察することで積分可能となる条件について調べる。これらを応用し、ガウス・ボンネ型定理について調べる。また、特異点を許容する場合に対象を拡張し、混合型フロンタルの幾何学についても調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に予定していた出張がキャンセルとなったので旅費の誤差が生じた。次年度は可能なら出張旅費として使用したいと考えているが、状況により書籍等の物品購入に使用する。
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