今年度は新型コロナウイルス感染症に関する渡航制限が緩和されたことにより、完全に自由とはいかないが、海外への出張も行うことができた。特に、9月にイギリスのエディンバラ大、アバディーン大での研究集会での発表および研究連絡を行うことができ、本研究課題の成果を発信したり、最新の研究の動向について情報を得ることができた。 研究内容そのものについては、前年度から着手しているホモトピー正規性について、論文を執筆し、Journal of Topologyに掲載された。主結果の大枠はすでに得られていたものであるが、本年度は具体例の計算が改善するなどの進展があった。この研究ではファイバーワイズA無限大構造が重要な役割を果たしており、その中で当初想定していたものよりも精密な高次ホモトピー的取り扱いが必要であった。結果として基礎理論の構築という本研究課題の当初の目標にとっては問題を増やすこととなり、期間内に基礎理論の構築の目標は達成されなかったが、ファイバーワイズA無限大構造の理解そのものについてはむしろ進展したと考えている。 A無限大構造を扱った他の話題として、岸本大祐氏、武田雅広氏とともにリー群の可換元のなす空間のホモトピー型についても研究を行った。真に可換な元たちのなす空間は岸本氏、武田氏により組み合わせ的に記述されていたが、これは非常に複雑なもので、むしろ高次ホモトピー可換な元たちを考えたほうが簡単に見える。これらのホモトピー型の差について、コホモロジー群やホモトピー群を通じて比較を行い、Atiyah--Bott氏らの類似の結果の拡張ができる部分と、拡張できない部分について例を与えた。
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