研究課題/領域番号 |
19K14537
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山中 仁 大阪市立大学, 数学研究所, 特別研究員 (90725011)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 一般トーラス軌道閉包 / トーリック多様体 / Poincare多項式 / トーラス作用 / Schubert多様体 |
研究実績の概要 |
A型Schubert多様体内の一般トーラス軌道閉包の理論がLee-Masudaにより始められた。この理論の最も興味深い点として「Schubert多様体とその一般トーラス軌道閉包が類似している」という点が挙げられる。そのことを示唆する予想がLee-Masudaによりいくつか提出されているが、今年度の研究で、Poincare多項式に関する部分を解決することができた(論文執筆中)。その証明はアフィン分割の構成による。一般トーラス軌道閉包は特異点をもち得るのでBB理論は適用できない。従って、アフィン分割をもつということ自体が興味深い現象であり、空間としての性質の良さやSchubert多様体の良い類似であることを(トポロジーの立場から)示唆していると思われる。なお、後に、Lee-Masuda-Park-Songによって(レトラクション列という別の手法を用いた)組み合わせ的別証明が発見されたことを付記しておく。 また、代数トーラスの作用をもった特異多様体が一般トーラス軌道閉包をもつための簡明な十分条件を見出した。証明は簡単かつごく短いものであるが、現時点では一般トーラス軌道閉包はGrassmann多様体、Schubert多様体、旗Bott多様体などの具体的な多様体に対してのみ調べられていることから、将来的に一般トーラス軌道閉包の理論を概念的により良く理解するための良い枠組みになると思う。最後に、GKMグラフのグラフ同変コホモロジー剛性に関するFranzとの共著が査読雑誌から出版された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Schubert多様体内の一般トーラス軌道閉包がアフィン分割をもつという、今後様々な考察(例えばトーラス同変コホモロジーの決定)をしていく上で基盤となる結果が得られたため。また、同変剛性に関するFranzとの共著が出版されたため。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは論文の執筆を完了させ、arXivや査読雑誌への投稿を行う。 次の段階として考えられる方向性は多々あるが、2020年度は特に、幾何学的表現論の観点から、次の2点に着目して研究する:(1) 今年度得られたアフィン分割が、トーラス不変なWhitney階層を与えるかどうか (2) Demazure指標公式の類似にあたるものが成り立つかどうか
(1)はBraden-MacPherson理論を適用して、モーメントグラフの観点から一般トーラス軌道閉包の(局所)交叉コホモロジーを調べる際に前提となる重要な案件である。(2)はSchubert多様体との類似性がトポロジーや代数幾何のみならず、幾何学的表現論のレベルで起きているかどうかを推し量る試金石となる。
|