2023年度は,力学系に現れる幾何構造の特異性の視点による研究に関する以下の項目について研究が進展した. (i)情報幾何学に現れる測地流:対称性の高い標本空間上の統計的モデルである統計的変換モデルに関して,付随する測地流の研究をフランスの共同研究者と研究を行った.コンパクトLie群上の統計的変換モデルに関するα接続と呼ばれるアファイン接続に関する測地流や多変量正規分布族に付随する半直積Lie群上のFisher-Rao計量に関する測地流の記述を行い,sub-Riemann構造との関係を明確化した.これらの結果については,前者は国際会議プロシーディングスに論文が掲載され,後者についても論文を国際会議プロシーディングスに投稿している. (ii)等質空間上のsub-Riemann測地流:非ホロノーム拘束とよばれる拘束条件下での粒子の自由運動を数学的に一般化した概念がsub-Riemann多様体における即値流である.これに関して,7次元球面上の階数5の自明化可能sub-Riemann構造に関するsub-Laplace作用素の熱核の構成に関するドイツの共同研究者との共著論文が学術誌に掲載された.また,7次元球面上のすべての自明化可能sub-Riemann構造に関するsub-Riemann測地流の可積分性に関する同じドイツの共同研究者との共著論文に等長群に関する結果を加えたものを学術誌に投稿している. その他にも,半単純Lie群上の測地流の平衡点の安定性解析に関する中国・スイスの共同研究者との共同研究,自由剛体のEuler方程式の摂動に関するフランスの共同研究者との共同研究,Lie群上のsub-Riemann測地流に関するドイツの共同研究者との共同研究等で研究が進展しており,今後研究結果がまとまり次第学術誌への投稿やセミナー・研究集会等での発表を通して公表して行く予定である.
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