研究課題/領域番号 |
19K14544
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
窪田 陽介 信州大学, 学術研究院理学系, 講師 (30804075)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高階指数理論 / トポロジカル絶縁体 / K理論 / 正スカラー曲率計量 |
研究実績の概要 |
本年度は4本の論文を執筆し、arXivに投稿した。3本はトポロジカル物理に関するもので、1本は高階指数理論に関するものである。 1本目は、格子ゲージ理論におけるWilson-Dirac作用素の指数定理に、高階指数理論に基づいた数学的証明を与えた。ここでは、Gromov-Lawsonの(幾何的な文脈で研究されていた)概平坦ベクトル束の理論が、実は適切な翻訳によってWilson-Dirac作用素の指数定理の証明になっていることを指摘した。 2本目は、五味清紀氏、Guo Chuan Thiang氏との共同研究で、結晶群から二通りのやり方で構成される二つのトーラスの、捩れ同変K理論の同型を証明した。これは位相的T双対を一般化したもので、結晶T双対と呼んでいる。特に二つの群のうち片側は、(一般化された)結晶対称性を持つトポロジカル絶縁体の分類を与えるものである。 3本目では、かねてより研究していた高階指数理論の余次元2転送写像について掘り下げる研究を行った。余次元2転送写像とは、閉多様体Mとその(よい)余次元2部分多様体Nに対して、Mの基本群の群C*環のK群からNの基本群の群C*環のK群への群準同型で、Mの高階指数とNのそれを関連づける。この研究では、この余次元2転送写像を拡張することで、Mの高階rho不変量という2次不変量とNのそれを関連づけた。また、巡回コホモロジーとのペアリングと余次元2転送写像の関係についても記述を与えた。 4本目では、格子欠陥を持つ物質の上のハミルトニアンに対するバルク・欠陥対応を証明した。これは物性物理の文脈では知られていた事実のC*環論的定式化に基づいた数学的証明である。証明は、上記の2本目の論文で与えた余次元2転送写像を特別な場合に考えることで得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に執筆した4本の論文は、研究計画として具体的に記載した内容そのものではないが、いずれも背景や目標を共有するものである。計画時に予期していなかった方向で研究がうまくいき、とりわけあまり関係があると思っていなかった指数理論の幾何学と物理への応用が思わぬところで合流することがあったのは、研究題目の主旨を実現することができたと思っている。また、研究計画に記載した研究についても、準備は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に記載した研究について、これまで準備してきた観察をまとめて、本年度中に論文を執筆することを目指す。加えて、最近発展しつつある新しい研究テーマが本研究課題に整合していると思われるので、そちらについても推し進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの問題により、主要な用途である研究出張に研究費を用いることができなかったため。次年度使用額は令和3年度請求額と合わせて書籍代,オンライン会議用の通信機材等の物品費および,可能ならば出張費として使用する予定である.
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