研究課題/領域番号 |
19K14544
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
窪田 陽介 信州大学, 学術研究院理学系, 講師 (30804075)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 指数理論 / 非可換幾何 / K理論 / 正スカラー曲率計量 |
研究実績の概要 |
2021年度には,2種類の研究を行った. 第一は,2020年度に取り組んでいた高階指数の余次元2転送写像の理論の中で導入したテクニックを,GromovとZeidlerのバンド幅の理論に適用する研究である.このアイデアによって,「KO-バンド幅の無限性」という正スカラー曲率計量の存在に関する障害が,Rosenberg指数という既存の障害に帰着されることを証明した.これはSchickのメタ予想と呼ばれるスローガンを補強する結果であり,2019年にZeidlerによって提案されていた予想の肯定的解決である.バンド幅は,正スカラー曲率計量の存在問題に関する新機軸として近年注目されており,本結果もその流れを汲んでいる. 第二は,曲面上の磁場付きシュレディンガー作用素のスペクトルに関するLudewig氏,Thiang氏との共同研究である.平坦な平面上の磁場付きシュレディンガー作用素はスペクトルが離散的になることが知られているが(ランダウ量子化),ここでは,曲率が遠方に行くにつれて0に収束するような曲面,とりわけヘリコイドに対して類似の性質を考察した.作用素環を用いて「非局在スペクトル」という概念を導入し,これが平面と同様に離散化することを示した.加えて,C*-環のK理論を用いることで,半ヘリコイドの非局在スペクトルのギャップが局在スペクトルによって埋まることを示した.スペクトルを決定するという解析的な問題に,作用素環論を用いた手法を提案することに成功しており,本研究の目的によくかなっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主に高階指数理論の発展という方向性において,本研究は順調に進展している. 特にバンド幅の研究などは,研究計画の段階では予期していなかった方向性であり,高階指数という概念への理解が深まる発見であった.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き指数理論についての研究を継続する.特に,非コンパクト多様体の相対指数に関する研究計画をまとめることを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症により,主要な研究費の用途である研究打ち合わせ,研究成果発表といった活動が大きく制限された.それに伴い,研究計画の一部が実行しきれなかったため,研究の1年間の延長を申請し,残りの研究費を持ち越した.次年度は可能な範囲で出張を再開していく予定である.
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