研究実績の概要 |
本研究では, 離散的な四半面上で定義される四半面テープリッツ作用素の指数理論の展開に取り組んだ. 本年度は物性物理学で近年活発な研究がなされてきた高次トポロジカル絶縁体に対する特徴量を, 四半面テープリッツ作用素の指数理論の立場から議論する研究を行った. 高次トポロジカル絶縁体研究では, 系の内部に対して定義される特徴量を反映して系の角に局在した波動関数が現れる, というバルク・コーナー対応が知られている. ここでは物性物理学で確立されている空間反転対称性を保つ二次トポロジカル絶縁体に対するバルク・コーナー対応について研究を行い, ある特別な状況において四半面テープリッツ作用素の指数理論を用いた一つの証明を与えた. これにより高次トポロジカル絶縁体に対して知られている特徴量を, 指数理論を通して議論する一つのアプローチが得られたものと考えている. 研究期間全体の成果としては以下の成果を得た. (1)四半面テープリッツ作用素の指数理論の展開に関しては, その背後にある幾何学的描像をある種の解析接続に着目した議論を展開することで明らかにし, いまひとつの指数公式を導出した. この結果は物性物理学からの視点からも示唆を得ることで得られたものである. (2)高次トポロジカル絶縁体研究との関連については, Benalcazarらによる高次トポロジカル絶縁体のモデルの一つを四半面テープリッツ作用素の指数理論を用いて議論した. さらに本年度の成果と合わせて高次トポロジカル絶縁体研究との接点は一定程度開拓することができたものと考えている. さらに応用のための理論の整備としては, Altland-Zirnbauer 10-fold wayのそれぞれのクラスに対するトポロジカル角状態の分類表を提出した. これらの結果をきっかけとして物性物理学の研究者と共同研究二件を行い, それぞれ論文を出版した.
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