研究課題/領域番号 |
19K14550
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 悠平 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (20804511)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非可換従順作用 / クンツ環 / 同変テンソル吸収定理 / C*-単純性 / 局所コンパクト群 / 完全不連結群 |
研究実績の概要 |
重要度の高い研究成果を3つあげることができた、濃厚な年度であった。 (1)従順でない群のC*力学系のはじめての分類型定理(より正確にはKirchbergのO2吸収定理を完全群というきわめて広いクラスの群について完全な形で証明した。)これはOcneanuの80年代の強大な研究以来信じられていた、群の従順性が作用の分類可能性についてdichotomyを定める、 という予測を裏切る極めて重要度の高い発見である。(この”dichotomy”はフォンノイマン環の場合には、Jones, Popa, Brothier-Vaesなどにより、実際に正しいことが確認されている。)よって、この成果はC*-環特有の豊かさと深遠さを新たに明示する。 論文は格調高い一流誌「Compositio Mathematica」に掲載受理された。 (2)小沢登高(RIMS)と共同で、これまで長い間不明瞭であった、非可換従順作用の定式化、特徴づけを、完全なる一般性のもとで完成することができた。これは私がここ数年取り組んできた研究、特に上述した(1)を背景に、強く求められていた基礎理論を完成する重要な成果である。この理論の応用として、Pimsner構成に依る、非可換従順作用を量産できる新しい方法を確立した。これは今後、より一般の従順作用に関する分類理論の発展に大きく貢献するものと確信している。 (3)離散でないC*-単純群を作る新しい方法を編み出した。特にすべての完全不連結群はC*-単純群の開部分群となり、C*-単純性には局所的な障害がないことがわかった。既知の構成法(これも私の研究)は離散群の良い形をした射影極限としてあったが、これは群環も含め構造が離散群に極めて近く、あまり面白みはない。今回の研究でde la Harpeの問題(離散でないC*-単純群は存在するか?)が本当に納得できる形でようやく解決できたと自負している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
作用素環論の歴史的転換点となるであろう重要な研究成果を三つ挙げることができたため、判断は当然である。
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今後の研究の推進方策 |
(2), (3)の研究を通して、離散でない群、特に完全不連結群と関連した作用素環の研究には 手付かずで面白い題材の宝庫が眠っていると確信できた。 これらについて興味を絞り、今年度の研究成果の反省を行いつつ、 (あまりたくさんはない)既存の研究成果や(幾何学的)群論の技術や面白い具体例を吸収し、 より完成度の高い一般理論や、群論の観点から見ても面白い研究成果の獲得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症拡大による惨状のため、計画していた出張活動のほとんどを実行できなかった。 今年度は発展性のある興味深い題材をいくつか見つけることができたので、 次年度感染症の状況が落ち着き次第、これを手土産に国内外の研究者を訪問し、情報交換や共同研究に繋げたい。
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備考 |
経歴、研究成果(論文、講演)、出張記録などを公表している。
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