研究課題/領域番号 |
19K14550
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 悠平 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (20804511)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非可換従順作用 / 局所コンパクト群 / C*-単純性 / 安定有限単純C*-環 |
研究実績の概要 |
(1)前年度数理研の小沢登高との共同研究をまとめた論文が、格式の高い学術誌Selecta Mathematicaに掲載された。論文の重要性を踏まえて、共著者の予算により論文はオープンアクセスとした。ごく最近、この論文で自由群の場合に得られていた、O_∞上の同変KKが自明になる作用の構成について、より一般に強バウム=コンヌ予想を満たし(例えばHaagerup性質をもつ群)、完全である第二加算局所コンパクト群に拡張することができた。 (2)C*環の離散接合積の単純性のチェックやトレースの分類を可能にする、Breuialle-Kalantar-Kennedy-小沢の定理を、非単位的の場合に拡張することに成功した。非単位的な環上の接合積は、コサイクル作用や群の拡大を考える際、単位的な環にしか興味がない場合でも現れ、離散でない群が生成するC*環は非単位的となってしまうため、この拡張は重要な意味を持つ.応用として(離散とは限らない群の)C*単純性やトレースの一意性が、離散拡大で保存されることを示すことができた。さらにPacker-Raeburnの定理により、Bryder-Kennedyの捻れ接合積に関する定理に簡潔でより一般的な証明を与える。 (3)安定有限型(トレースを持つタイプ)の単純C*環上に非従順群の従順作用を構成することに成功した。既存の構成(すべて私による)ではその仕組み上、純無限型のものしか作れなかったが、今回はそうでないものを作ることに成功した。C*環の有限性はある意味簡単に壊れてしまう性質なので、構成は技巧的なものとなった。具体的には全Fock空間、トレースを縮小する自己同型が構成のカギとなる。これはもっと自然で面白い例がゴロゴロと転がっており、純無限型で大きな成功を収めた従順作用の分類理論が有限型の世界でも成り立つのではないか、という期待を持たせてくれる成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
非単位的でないC*-環の接合積を解析する手法など、意義のある成果が着実に得られているほか、年度の最後に安定有限型単純C*環上の従順作用の構成を発見することができた。とくに後者の発見は、今後の作用素環論の目指すべき方向とその豊穣さを大きく変革する、きわめて重要度の高い成果であると認識している。そのため評価は(1)とした。
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今後の研究の推進方策 |
安定有限型の単純C*環上の従順作用について、さらなる追求を行う。例えば分類理論の前提として必要となるはずの同変Z吸収性がいつでるか、K論的な不変量がどのような値をとりうるか、もっと簡潔で画一的な構成法が得られないか(純無限型の場合には、Pimsner構成がその正解であった。このような構成の安定有限版が存在するか?)、などに挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、予定していた出張のほとんどを実行することができなかったため。コロナとの共生に社会の流れが変わりつつあるので、今年度は今まで遅れていた他研究者との交流を積極的に行なっていく。そのための旅費や招聘費用に予算の多くを用いる。
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備考 |
論文や講演リスト、出張記録や大学での業務などを公表している。
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