研究実績の概要 |
本研究では,「研究の目的」や「研究実施計画」にもあるように,様々な線形作用素に対応したノイマン・ポアンカレ作用素について,スペクトル理論を展開し,線形偏微分方程式に応用することを目的としている. 2019年度はとくに,ラプラス作用素に対応した, electro-static Neumann-Poincare operator と弾性体のLame システムに対応した, elastic Neumann-Poincare operator について, スペクトルの漸近挙動を研究し, 応用例に言及した.2020年3月現在,2019年度分の4編の論文が,査読付き国際学術誌に受理されている(researchmap も参照). 関連して,下記,国内外の各種セミナー,ワークショップや学会で, 講演(集中講演,特別講演を含む)も行った. 1."大阪市立大学理学部 E 棟数学講究室(E408 号室), 南大阪応用数学セミナー",2. " 2019 年度ポテンシャル論研究集会, 大阪市立大学", 3. "Workshop: Neumann-Poincare Operator and Related Topics, Central South University, Changsha, China", 4. "(特別講演) 日本数学会, 金沢大学", 5. "RIMS 共同研究(グループ型) 幾何構造がもたらすスペクトル解析における新展開, RIMS Workshop, New aspects on spectral analysis brought by geometrical structures, 京都大学", 6. "偏微分方程式集中セミナー,城之崎", 7, "The Ninth Congress of Romanian Mathematicians, Galati, Romania", 8."力学系-新たな理論と応用に向けて, 京都大学"
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初「研究の目的」や「研究実施計画」で予定していた,滑らかな3次元領域の2次元境界におけるノイマン・ポアンカレ作用素に対して,スペクトル(固有値)の漸近挙動を,第一次近似まで求めることが出来た.Weyl's law とも呼ばれるこの結果は,国際研究であり,査読付き論文として受理されている.さらにこの研究では,正負の固有値の挙動を各々求め,積分作用素に対して自己共役でない場合にも,固有値の漸近挙動を求めることが出来た. 自己共役な線形作用素に対しては,同様の研究成果が大量にあるものの,自己共役でない場合にも拡張可能であることを示せた.この新規性の高い本研究の成果は,Cloaking 現象やスペクトル解析に関連して,物理学でも強く要請されたものでもある. さらに,ディリクレ・ノイマン写像や幾何解析で研究される Willmore energy, (0階や-1階の)擬微分作用素のスペクトル理論にも関連した結果も出せた。 最終的に本年度の成果は,国際的な学術論文誌に4偏の論文として受理され,国際的な研究集会,学会でも講演の上,多くの分野(解析,幾何,物理学)の研究者との議論も活発に行われるようになった. ノイマン・ポアンカレ作用素のスペクトルの構造や挙動の問題は,詳細に知れば知るほど,物理現象も詳細に説明可能となり, 数学的な結果においても,境界の幾何構造や作用素の興味深い性質も露わになってきた. 加えて,2020年度以降さらに進捗予定の,Cloaking 現象やスペクトル解析の基礎付けも出来たと考えている.次年度に繋げるための研究論文も,一編はarxiv( https://arxiv.org/abs/2003.14387)を投稿準備中であり,さらにもう一編は執筆準備中である.
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