研究課題/領域番号 |
19K14559
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
中園 信孝 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40835162)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 離散KdV方程式 / 立方体上のコンシステンシー / 離散パンルヴェ方程式 |
研究実績の概要 |
本年度は,可積分な2次元偏差分方程式の理論について,以下の2つの課題を中心に研究を行なった。 (1) dKdV方程式の立方体上のコンシステンシーの理論: 浅水波の数理モデルであるKorteweg-De Vries (KdV)方程式の離散類似として広田の離散KdV方程式(以下,dKdV方程式とよぶ)が知られている。dKdV方程式はAdler-Bobenko-Suris, Bollによる可積分な2次元偏差分方程式の分類のリストに含まれていないため,その立方体上のコンシステンシーの構造(一種の可積分性)についてはよく分かっていなかった。本研究では,multi-quadratic equationとよばれる各変数に関して次数2の多変数多項式で与えられる2次元偏差分方程式へのベックルンド変換を用いることで,dKdV方程式の立方体上のコンシステンシーの理論の構築した。また,本研究ではlattice Sine-Gordon方程式とよばれる2次元偏差分方程式もdKdVと同様の立方体上のコンシステンシーを持つことを示した。本年度は,この研究成果の一部をまとめて論文誌に投稿した。 (2) q-dKdV方程式のq-パンルヴェ超越関数解: 可積分な2階の非線型常差分方程式の族として離散パンルヴェ方程式が知られている。本研究では,乗法型の離散パンルヴェ方程式の一般解(q-パンルヴェ超越関数)を用いた乗法型のdKdV方程式(q-dKdV方程式)の特殊解についての研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,「dKdV方程式の立方体上のコンシステンシーの理論」および「q-dKdV方程式のq-パンルヴェ超越関数解」についての研究に取り組み,十分な成果を得ることができた。さらに,「dKdV方程式の立方体上のコンシステンシーの理論」については成果の一部を論文の形にまとめて論文誌に投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は,令和2年度に引き続きdKdV方程式に関する研究を中心に行う。特に,「q-dKdV方程式のq-パンルヴェ超越関数解」に関しては,成果の一部を論文の形にまとめて論文誌に論文を投稿,および,国内外の学会で講演するなどの方法で成果の発表をおこなう予定である。 令和4年度は,3年目までの研究を引き続き行ない,加えて,dKdV方程式と同様の立方体上のコンシステンシーを持つ2次元偏差分方程式の分類に関する研究,および,q-dKdV方程式の特殊解がq-パンルヴェ超越関数で表される特殊解を持つメカニズムの解明についての研究も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は新型コロナウィルスの影響で国際会議および国内会議はキャンセルまたはオンラインで開催されたため,その旅費などの経費分を来年度に繰り越すことにした。令和3年度も同様の理由で国際会議および国内会議のための旅費等は不要となることが予想されるため,旅費として使用予定であった予算の一部を文献やPCおよびその周辺機器の購入に使用する予定である。
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