本研究では一般の非線形熱方程式に対する可解性と初期値の特異性の関係について論じる.方程式固有の性質である自己相似性は非線形性と拡散効果のバランスを記述する重要な性質であり,方程式の可解性を特徴付けるものであるが,一部の方程式にのみ期待される.本研究課題では,自己相似性を一般化した「準自己相似性」に着目し,方程式の時間局所および時間大域可解性を明らかにすることが目的である. 本年度は指数型非線形性を除いた一般の非線形熱方程式に対して,可解性のための初期値の臨界特異性の導出を行なった.研究代表者らによる既存の研究成果で,初期値の可積分性に基づく可解性は特徴付けられていたが,特異性の発散オーダーの特定に至っていなかった.半線形熱方程式の可解性のための必要条件および十分条件を一般の非線形熱方程式に対して詳細に調べることで,上記課題の解決につながった.本年度の研究で得た知見の下,今後は指数型非線形熱方程式に対しても初期値の特異性の特定を行う予定である. 本研究を通して,一般の非線形熱方程式に対する「時間局所解」および「時間大域解」の存在のための初期値の条件を可積分性を基に特徴付けし,さらに指数型を除く非線形方程式に対しては初期値の特異性をより詳細に記述することに成功した.これらの研究では方程式の準自己相似性が議論の根幹を成しており,その重要性を認識することができた.また,研究期間全体を通じて計7本の学術論文を査読付き国際誌で発表した.
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