前年度に取り組んでいたあるパラメータ付き準線形波動方程式の解の爆発の論文と空間無限遠方で退化する空間1次元準線形波動方程式の時間局所解の一意存在の論文が、それぞれCommnications in mathematical scienceとIndiana mathematical Journalから出版された。 今年度に取り組んだ研究は、 1.空間無限遠方で退化する空間高次元準線形波動方程式の解の存在と非存在について。上述の1次元の結果は、特性曲線の方法を使って解を構成していたが、空間高次元ではその方法は使えない。解の構成にはエネルギー法を用いるが、それ行うための特殊な重み付き空間の整備も行った。1次元版と同様に、方程式の主要部だけでなく、主要部の減衰率と空間1階偏微分の係数の減衰率とが、可解性に関わる「Levi条件」と呼ばれる条件が現れることがわかった。論文は投稿中である。 2.空間1次元変数係数摩擦項付き圧縮性オイラーの方程式の時間大域解の存在と非存在(解の爆発)について。これについては、空間全体を、特性曲線を使って切り分けるアイデアを用いて証明した。これまでの研究で扱えていなかった、摩擦項の係数が、時間空間の変数両方に、本質的に依存するような場合、係数に可積分性を仮定して、時間大域解の存在と解の爆発の結果を証明することができた。特に、空間変数に依存した場合の時間大域解の存在については、ほとんど結果がなかったと思われる。また、近年証明された、新しいタイプの最大値原理を、より簡潔な、自然な形で証明を与えた。この結果をまとめた論文は、現在投稿中である。
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