研究課題/領域番号 |
19K14576
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤江 健太郎 東北大学, 数理科学連携研究センター, 准教授 (50805398)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 走化性方程式 / Keller-Segel系 / 放物型方程式 / 関数方程式 / 爆発現象 / 走化性 / 移流拡散 / 移流拡散方程式 |
研究実績の概要 |
本研究では、走化性による粘菌の運動を記述する数理モデルの解の長時間挙動の解析を行った。特に、粘菌の知覚が局所的であるというLocal sensingの走化性モデルを対象とした。得られた結果は以下の通りである。 (1) Local sensingの効果を表す運動性函数に対する緩やかな条件の下で、高次元において数理モデルの解が時間大域的に存在することを示した。Local sensingの走化性モデルの解を上から評価する補助函数を昨年度に開発していた。この補助函数がある非線型放物型方程式の解とみなせることに注目し、ヘルダー評価と発展方程式の一般論を組み合わせることで解の評価を得た。また、指数減衰する運動性函数の場合には、時刻無限大で爆発する解を構成した。 (2) 対数型知覚函数をもつ走化性方程式の解の長時間挙動は、高次元(次元nが3以上)では知覚函数のパラメータによって変動し、特にn/(n-2)が閾値であることが本研究代表者の先行研究で予想されており、肯定的な結果が部分的に得られている。対数型知覚函数をもつ走化性方程式との類似性を踏まえて、上記予想の劣臨界部分に対応する課題を多項式減衰する運動性函数をもつLocal sensingの走化性モデルで考えた。上述の補助函数の導入を見直し、補助函数の定数倍で解を上下から各点評価することを可能とした。これを用いて補助函数が満たす非線型放物型方程式の解析を行ない、劣臨界冪の多項式減衰する運動性函数をもつLocal sensingの数理モデルの時間大域可解性を導出した。対数型知覚函数をもつ走化性方程式の研究では、初期値の大きさに対する仮定の下でのみ劣臨界部分の時間大域可解性が得られていたが、本結果ではこれらの仮定を外すことが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス蔓延の影響で、講演発表・参加を予定していた国内・国外の研究集会がオンライン形式への変更・延期となった。このため、予定していた出張を取りやめた。また、出張の取りやめにより国内・国外の共同研究者との研究打ち合わせを円滑に進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
以下のように今後の研究を推進したい。 (1) 単独の非線型熱方程式の摂動として走化性方程式を捉えるという研究に関しては、摂動パラメータによる解の誤差評価を引き続き検討する。また、今年度の研究でLocal sensingの数理モデルの解は上下から補助函数で評価できることが分かった。この利点を活用し、Local sensingの数理モデルでの対応する課題の検討を行うことで研究を推進する。 (2) 走化性方程式の数理構造的視点による一般化の研究に関しては、引き続き有限時刻爆発解の構成を検討する。数理モデルの一部の方程式を楕円型に変更し、研究の推進をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延の影響により、参加予定だった国内・国外研究集会がオンライン開催への変更・延期になり、出張を取りやめたため。また、研究打ち合わせの出張を取りやめたため。この分は次年度の出張にあてる。
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