研究実績の概要 |
本研究では, 数理物理や非線形光学の分野で普遍的に現れる非線形分散型方程式の解の時間無限大での漸近挙動を解明することを目標とする. 研究のキーワードを「高次元」として, 低次元で得られている結果の一般化や, これまで解析がなされていないモデルの解析を目指している.眞崎聡氏, 瀬片純市氏との共同研究により, 1次元における2成分からなる3次の非線形Klein-Gordon方程式系について, その解の漸近挙動の解析を行った. 方程式系が未知関数の線形変換について閉じていることに着目し, それから自然に導入される同値関係によって方程式系全体の集合を同値類で分類することに成功した. 結果として, これまで解の漸近挙動が知られていない方程式系について, その解の漸近挙動を明らかにした. 青木一貴氏, 戍亥隆恭氏, 宮崎隼人, 水谷治哉氏と共同で星型グラフ上の3次の非線形Schroedinger方程式について, 初期値問題と終値問題のどちらの場合についても解の漸近挙動が対数型の補正をもつ修正自由解になることを示した. また, 共同研究を発展させ, 非斉次な非線形項をもつ非線形Schroedinger方程式についても3次元以下の場合に解の漸近挙動が非斉次な非線形項に対応した対数型の補正をもつ修正自由解となることを示した. 非斉次非線形Schroedinger方程式はある変換によって, 高次元の逆2乗べきポテンシャルをもつ非線形Schroedinger方程式と対応しており, 当初は予想していなかった方向で高次元で解の漸近挙動が得られる場合があるということが分かった. 岡本葵氏と共同で一般の微分型の非線形項をもつ4階Schroedinger方程式について, 波束に着目した漸近解析により解の漸近挙動が自己相似解となることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
青木一貴氏, 戍亥隆恭氏, 宮崎隼人, 水谷治哉氏と共同で行った研究により, 高次元の方程式を直接扱うのではなく, 低次元の方程式に変換することで解の漸近挙動が得られる場合があることが分かった. このような研究は臨界べきをもつ方程式の解の漸近挙動を考える際にはこれまで行われておらず, 新しい視点である. また, 非斉次の非線形性をもつ非線形Schroedinger方程式と逆2乗べきポテンシャルをもつ非線形Schroedinger方程式はそれら自身について近年活発に研究が行われている方程式であり, 非斉次性の指数や逆2乗ベキポテンシャルの係数も含めて網羅的に行う必要性を認識するに至った.
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今後の研究の推進方策 |
青木一貴氏, 戍亥隆恭氏, 宮崎隼人, 水谷治哉氏と共同で行った研究により, 高次元の方程式を直接扱うのではなく, 低次元の方程式に変換することで解の漸近挙動が得られる場合があることが分かった. 高次元の場合を低次元に帰着させて漸近形を同定することができたので, それを下に高次元の場合を直接扱い, 得られている結果の直接的な別証明を与えることを目指す. これにより, 高次元の困難さと認識されていることをこれまでとは異なった観点から研究しなおす.
眞崎聡氏, 瀬片純市氏と共同で研究した非線形Klein-Gordon方程式系について, 1次元3次の方程式系はその同値類を完全に分類することに成功したが, まだ解の挙動を形式的にしか導出できていないものが残っている. これらの場合に解の長時間挙動を完全に決定することが目標となる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の流行を受けて, 研究打ち合わせを行うための出張が行えず, 学会や研究集会もオンライン開催となっており, 旅費の使用が困難な状況であった. 2021年度も引き続き新型コロナウイルス感染症の流行は続いているが, 旅費として使用予定であった分は洋書の購入など研究資料の充実などに転用する. 研究打ち合わせはオンラインで行うことができるため, 出張が制限されている中でも研究結果を出せるよう引き続き努力していく.
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