研究課題/領域番号 |
19K14578
|
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
瓜屋 航太 岡山理科大学, 理学部, 講師 (10779474)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 非線形Klein-Gordon方程式 / 非線形Schroedinger方程式 / 漸近挙動 / 修正散乱 |
研究実績の概要 |
本研究では,数理物理や非線形光学の分野で普遍的に現れる非線形分散型方程式の解の時間無限大での漸近挙動を解明することを目標とする.研究のキーワードを「高次元」として,低次元で得られている結果の一般化や,これまで解析がなされていないモデルの解析を目指している. 眞崎聡氏,瀬片純市氏と共同で1次元において2成分からなる3次の非線形Schroedinger方程式系について,その解の漸近挙動の解析を行った.これまでの研究で得られている類似の構造を持つ非線形Klein-Gordon方程式系についての分類定理が係数に少し制限を加えた場合のSchroedinger方程式系に適用できることを用いて,対応する条件の下で解の漸近挙動を調べた.また,副産物として非線形Klein-Gordon系の場合に未解決であった場合について,非線形Schroedinger方程式系の解析を通して解の漸近挙動を得ることができた. 北直泰氏,眞崎聡氏,瀬片純市氏と共同で1次元において2成分からなる3次の非線形Schroedinger方程式系について,その解の漸近挙動の解析を行った.単独の非線形Schroedinger方程式の場合には非線形項係数が複素数で虚部が負であるとき,非線形の消散・増幅効果を持つことが知られていたが,実係数の2成分からなる非線形Schroedinger方程式系について,非線形効果により解の減衰が代数的なオーダーで遅くなる解の漸近挙動を得た.解の減衰が代数的なオーダーで遅くなるような解の挙動は単独方程式の場合に起こるかどうか知られておらず,方程式系の構造を上手く用いることでこのような解の存在を示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度, 青木一貴氏, 戍亥隆恭氏, 宮崎隼人氏, 水谷治哉氏と共同で行った研究により, 高次元の方程式を直接扱うのではなく, 低次元の方程式に変換することで解の漸近挙動が得られる場合があることが分かったがこの点については研究を進められていないものの,低次元の場合ではこれまで知られていなかった解の漸近挙動を解明することだできた.特に,北直泰氏,眞崎聡氏,瀬片純市氏との共同研究により,解の減衰が代数的なオーダーで遅くなるような解の存在を証明したことは大きな成果である.
|
今後の研究の推進方策 |
青木一貴氏, 戍亥隆恭氏, 宮崎隼人氏, 水谷治哉氏との共同研究で得られている結果は方程式の変換を用いて証明したが,この結果の直接的な別証明を与えることを目指す. これにより, 高次元の困難さと認識されていることをこれまでとは異なった観点から研究しなおす. 1次元3次の非線形項をもつ非線形Klein-Gordon方程式系と非線形Schroedinger方程式系ついては,方程式の未知関数の一次変換に関する分類定理から,かなり構造が解明されてきた.分類の中で解の漸近挙動が未解決な場合について引き続き研究を進める予定である. 近年,Tsutsumi-Yajima('84)による短距離散乱の結果の収束の位相を改善する研究や,1次元3次の非線形Schroedinger方程式の長距離散乱の結果について,初期値に関する仮定を弱める研究がいくつか報告されている.最新の手法を用いて,旧来から知られている結果を見直すという取り組みは今後重要性を増すことが予想されるため,このような取り組みに参入していくことを計画している.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に引き続き2021年度は新型コロナウイルス感染症の流行を受けて, 研究打ち合わせを行うための出張が行えず, 学会や研究集会もオンライン開催となっており, 旅費の使用が困難な状況であった. 2022年度も引き続き新型コロナウイルス感染症の流行は続いているが, 少しづつ状況は良くなっており,対面での研究集会が再開されることを期待している.それに伴い,対面での研究打ち合わせも行うことができれば良いと考えている.制限されている中でも研究結果を出せるよう引き続き努力していく.
|