研究実績の概要 |
本年度は, 学術論文12本が当該研究分野の権威のある査読付き国際誌及び国際会議に採録が確定した. 以下でそれらの概要を述べる. 線形ポテンシャルを持つ非線形シュレディンガー方程式で, 基底状態未満の作用を持つ初期値のNehari汎関数が正の時に, 大域適切性を示した(PAMS). 3次のハートリー型非線形項とスケール不変な時間依存した摩擦項を持つ波動方程式の初期値問題を研究した. 空間遠方で超臨界な多項式減衰する小さな初期値の解が有限時間で爆発することを示した(Nonlinear Anal). コンパクトサポートを持つ小さな初期値に対して, ポテンシャルの臨界指数を決定した(JDE). 伝播速度の差異を考慮した弱連立一般化Tricomi方程式(JEE)と時間依存した摩擦項と質量項を持つ波動方程式(Evol Equ Cntrol)で, コンパクトサポートを持つ小さな初期値の解の最大存在時刻を評価した. ノイズ付き非線形力学系に対して, 再生核ヒルベルト空間上のPerron-Frobenius作用素とカーネル平均埋め込みを用いて, Shift-Invert Arnoldi法と有限個のデータからその作用素の推定法を提案した(JMLR). 微分同相写像から定まる合成作用素がモレー空間上で有界になるための必要十分条件を示した(J Inequal Appl). ハイパーグラフ上の(劣モジュラー)ラプラシアンから定まるPersonalized PageRankを用いた2つの理論保証付きコミュニティ検出法を提案した(KDD). カップリングに基づく可逆ニューラルネットワークが微分同相写像の万能近似器であることを示した(NeurIPS). オーバーパラメトライズされたニューラルネットにおけるパラメータ分布が, リッジレッド変換のあるスペクトルに収束することを示した(AISTATS).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は, 査読付き学術論文12本の採録が確定した. そのほとんどが, 当該分野の権威ある国際誌及び国際会議に掲載または掲載予定である. このことは, 本研究が順調に進展していることを示している. 以下で, 各課題の具体的進捗状況を述べる. PAMSに採録されたシュレディンガー方程式の研究は, 「ポテンシャル付き楕円型方程式」の基底状態を用いており, 今後, 解の長時間挙動を調べるための基礎を創った. Nonlinear Analに採録された波動方程式の研究は, 先行研究と比較して, 「摩擦項の時間に依存した係数」が解へどのような影響を与えるのかを明かにした. JDEに採録された波動方程式の研究は, 解の爆発を示していた先行研究に対して, より詳細な「爆発時刻の評価」を導出した. これらは, 「ハートリー型非線形項の扱い方」を発展させた. 機械学習のトップジャーナルJMRLに採録された研究は, 先行研究と比較して, Perron-Frobenius作用素の「非有界性」を考慮に入れた「新しいKrylov部分空間法」を提案しており, この分野に1つの基礎理論を構築した. J Inequal Applに採録されたモレー空間の研究は, ルベーグ空間を扱った「先行研究では見られない現象」を発見しており, 関数空間論の研究に大きく貢献した. JEEに採録された弱連立系一般化Tricomi方程式とEvol Equ Cntrolに採録された波動方程式の研究は, 結果自体が当該分野を発展させたが, 「国際共同研究」である点も特筆すべきである. KDD, NeurIPS(Oral), AISTATSに採録された論文は, KDDがデータマイニングの最難関, NeurIPSが機械学習の最難関, AISTATSが機械学習のトップ会議であることを考慮すると, これらは, 当該分野に大きく貢献した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は, 現在進行中のいくつかの重要な研究課題があるので, それらを推進して, 学術論文の形にして出版する. また, ブレークスルーを与えるであろういくつかの着想があるので, それらを用いて新たな研究分野の創出を目指す. それらを達成するため, 今後はより一層共同研究者と綿密な連携を図り, 議論を重ねる. 特に, オンラインミーティングの充実化を図る. 対面での議論を通して, 研究の焦点になる部分を詰める. 進行中の研究課題のいくつかは以下である. 空間2次元のPoint interactionを持つ非線形シュレディンガー方程式の解の安定性. Hardy-SobolevまたはHenon型熱方程式の初期値問題の適切性及び解の大域挙動の分類. 空間2次元の指数型非線形項を持つHardy-Sobolev熱方程式の解の大域挙動の分類. ガウス型評価を満たす自己共役作用素から定まる非線形消散型波動方程式の臨界指数の決定, BBM-Burgers方程式の減衰の遅い初期値を持つ解の漸近展開. Non-autonomousな系に対する再生核ヒルベルトC*モジュールとPerron-Frobenius作用素を用いた新たなデータ解析手法の開発. Kernel DMD(Dynamic Mode Decomposiiton)の理論構築及び新しいアルゴリズムの創出. ハイパーグラフ上の(劣モジュラー)ラプラシアンの基礎理論の構築とそれを用いた新しいアルゴリズムの創出.
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