研究課題/領域番号 |
19K14585
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
盧 暁南 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (10805683)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Latin square / hypercube / Steiner quadruple system / orthogonal array / covering array / locating array / combinatorial design / group testing |
研究実績の概要 |
2019年度において,組合せデザイン理論や検査計画問題を軸として,ラテン方陣,Steiner四重系(SQS),直交配列(OA),locating配列等の組合せ構造およびそのバリエーションに関する研究を行った.具体的に研究成果は以下の通りである. (1) 直交ラテン方陣が統計的実験計画や組合せ論等の分野でよく知られている.本研究では,その一般化として mutually dimensionally orthogonal hypercubes (MODC) の概念を提案し,構成法を示した.さらに,有限体の道具を用いて,位数が素数冪のMODCについて先行結果より改善できたことを示した. (2) 巡回的Steiner四重系(CSQS) の存在性問題は組合せ論において重要な難問とされている.本年度では,CSQSより一般のクラスでアーベル群を自己同型群とするSteiner四重系における存在性およびその構成法問題を取り込んでいて,CSQSが存在する前提で,整数論と組合せデザイン論の手法を併用することで,その存在性を解明した. (3) 直交配列は統計的実験計画法,検査計画において最も重要な数理構造の一つである.本年度では,fMRI実験を行うための統計モデルおよび最適な実験計画において,OAのバリエーションとして巡回的準直交配列(CAOA)の研究を行った.そして,その最適性評価基準を考察し,研究成果で提案されたCAOAの最適性を示した. (4) 検査計画分野で交互作用における欠陥と特定するため,locating配列 (LA) と呼ばれる組合せ構造が提案された.本研究では,LAの性能(与えれた因子数・水準数・欠陥数に対して必要とするテストの回数)における下限界を考察し,新しい評価式を与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記のような理由で研究は順調に進展しているといえるであろう. (1) MODCについて,これまでに得られた成果を論文として投稿され,acceptされた. (2) 自己同型群とするSteiner四重系について,中国との共同研究として,その存在性を数学的証明を与え,論文として組合せ論の国際論文誌に投稿した. (3) 巡回的準直交配列(CAOA)について,これまでに得られた成果をまとめて統計関係の国際論文誌に投稿した. (4) locating arrayにおける新しい下限界式を含めて,covering array, detecting arrayなども含めた研究動向をsurvey paperにまとめられ,統計学の論文誌 Japanese Journal of Statistics and Data Science に掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,これまでの研究成果をさらに発展させたい.具体的に,下記の研究テーマについて,その組合せ構造の数理的側面に注目しながら関連する応用研究を推進していきたい. (1) locating arrayの構成法および誤り訂正能力を持つlocating arrayの構成法について,現在得られている研究成果をまとめ,論文として投稿する.また,locating arrayを用いた識別アルゴリズムの性能に関する研究を推進したい. (2) 巡回準直交配列(CAOA)の水準数が3以上のとき,その構成法,特徴付き,最適性,漸近最適性について,これまでに得られた知見を利用してより一般的な成果を得たい.さらに,強さが3以上の場合についても最適規準を解明し,その構成法を与えたい. (3) 組合せデザインのブロック交差グラフと検査計画配列の関連性について,それらに固有の組合せ的性質に注目し,Separably Existentially Closed (SEC) グラフと呼ばれるグラフ・クラスの構成問題と代数的特徴付きの研究を推進したい.さらに,SECグラフとその関連する組合せデザインの性質を利用して,検査計画の効率良いアルゴリズムの開発を取り込んでいきたい. そのために,国内外の研究者との研究情報交換をして行きたい.できるならば研究集会を開催して研究成果を発表し,情報発信,情報交換を行いたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響で2020年2-3月に予定された出張・国際会議開催における海外研究者の招待計画が全てキャンセルされてしまったため,次年度使用額が生じた. 2020年度に,もし国際会議開催することが可能であれば使用する予定である.また,研究打合せをオンライン化にすることと伴い,本来当面の研究打合せに使う予定の旅費をオンライン打合せのために必要になる情報機器の購入費用として使用する予定である.
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