研究課題
2023年度は,時間発展する偏微分方程式の時間離散化手法である,不連続Galerkin時間離散化法について研究成果を上げた.この手法は,時間変数に関するGalerkin法に基づく手法であり,高い安定性を持ちつつ,比較的容易に精度を上げることのできる手法である.この手法を抽象的な放物型発展方程式に適用して得られる近似解に対して,離散版の最大正則性と呼ばれる不等式評価を示すことに成功した.この評価は時空間のL^p-L^qノルムによる不等式評価である.下の抽象発展方程式に対しても同様の評価が成り立つが,この評価は非線形偏微分方程式の解析に応用されている.そのため,本研究で得られた成果も,非線形偏微分方程式に対する数値解析に応用が可能であると期待される.この成果は論文誌 SIAM Journal on Numerical Analysis にアクセプトされた.また,本年度は,平面曲線に対する最小化問題の数学解析に関して,数値的な立場から解析の補助を行った.最小化問題を時間発展方程式を利用して数値的に解き,その結果を数学解析へ応用した.曲線が動く問題そのものは,本研究課題の「滑らかな境界を持つ領域」の境界として現れうるため,ここで得た知見は,単なる数学解析への応用だけでなく,実問題で現れる偏微分方程式に対する数値解析へも応用できると期待できる.滑らかな境界を持つ定常Stokes方程式に対しても数値解析を行っており,論文執筆中である.研究期間全体を通しては,滑らかな境界を持つ領域上の楕円型・放物型方程式に対する数値解析に関して一定の成果を収めた後,時間変数の離散化についてもいくつかの成果をあげた.また,定常Stokes方程式に対しても成果を上げることができた.しかしながら,当初目標としていた非定常Stokes問題に対しては成果を上げることができなかったため,これは今後の課題である.
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