研究課題/領域番号 |
19K14592
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森川 耕輔 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (40824305)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 数理統計学 / 多変量解析 / 欠測値データ解析 / 多重代入法 |
研究実績の概要 |
得られるべきデータが得られない欠測値の問題は極めて重要であり,欠測に適切に対処しない解析方法は推定量に重大なバイアスを生じ得る.さらに不完全データに対して,完全に得られているデータのみを用いた解析はサンプルサイズの減少に伴う有効性の低下を招く.欠測値データ解析で得られている情報を最大限用いるためには,そのデータが欠測した原因である欠測メカニズムを特定することが重要となる.特に,従来の解析法ではしばしば欠測メカニズムの無視可能性が仮定される.これは,データが欠測した原因が観測データで説明できるという非常に強い仮定であり,データから検証不能である.本研究の目的は,近年発見された従来の欠測メカニズムの無視可能性をより数学的に緩和した条件に着目することで,データから検証可能な新たな無視可能性条件に対する検定手法を提案し,この新たな無視可能条件下で,セミパラメトリックな多重代入法を開発することである. 令和2年度までに,アイオワ州立大学のKim教授との共同研究で,無視不可能な欠測値データ解析における,モデルの識別性及びセミパラメトリック漸近有効推定量を提案した.本研究成果は統計雑誌のトップジャーナルの1つであるAnnals of Statisticsに採択された.最終年度である令和3年度では,当初の予定通り新たな無視可能条件には基づき経験尤度法を用いることで,従来の無視不可能な欠測値データに対しても有効なセミパラメトリックな多重代入法を確立する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度までに従来の無視不可能なデータに対する新たな識別性の十分条件を与え,さらにセミパラメトリック漸近有効推定量を構築した.これらの研究結果は統計学の専門誌に採択された.令和3年度では,これまでに得られた結果を合わせることで,当初の目的を達成する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は,これまで得られた結果をもとに,新たな無視可能条件に基づいたセミパラメトリック多重代入法を確立する.研究結果が得られ次第,研究結果の論文化及びプログラムのパッケージ化を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により当初予定した国際学会での研究報告及び海外での研究打ち合わせが全てキャンセルになってしまった.また本研究遂行のために,当初予定していたよりも大型の計算機が必要となることが分かったため,繰越金は大型計算機購入の費用として計上する.
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