得られるべきデータが得られない欠測値の問題は極めて重要であり,欠測に適切に対処しない解析方法は推定量に重大なバイアスを生じ得る.本研究では,応用上しばしば仮定されるデータから検証不能な欠測メカニズムの無視可能性を,観測データから検証するための十分条件を与え,これまで主観的に課されていた仮定を客観的に吟味することが可能となった.また,無視不可能であるという状況下でセミパラメトリック漸近有効推定量を提案し,新たな欠測値の代入法を開発した.これらの成果により,これまで応用上忌避されてきた無視不可能であるという状況下でのデータ解析手法の数理的基盤が構築され,より有用かつ実用的なものになるだろう.
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