研究課題/領域番号 |
19K14595
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
首藤 信通 近畿大学, 理工学部, 准教授 (00634099)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 欠測データ / 楕円分布族 / 漸近展開 / 検出力 / 非正規母集団 / 仮説検定 / 判別分析 / 統計的漸近理論 |
研究実績の概要 |
本年度もデータセットの一部が欠損した欠測データにおいて,特に観測対象の脱落を想定した単調欠測データに適用可能な統計解析法の理論的導出に関する研究活動を行った.本研究では対称性をもつ母集団分布の下で多変量正規分布より一般的な確率分布族として知られる楕円分布族で議論を行っている.本年度は,以下の研究課題に取り組んだ.なお,以下におけるk-step単調欠測データとは欠測パターン数がkの単調欠測データである. 研究1.2-step単調欠測データに基づく平均ベクトルに対する仮説検定 欠測データメカニズムがMCARの下で,楕円分布族を母集団分布にもつ2-step単調欠測データからなる平均ベクトルに対する尤度比検定を扱った.この尤度比検定の検出力に着目し,MCARでない状況を含むさまざまな設定の下で数値実験による検出力の数値的評価を与えた.また,数値実験を行うことなく検出力を近似的に評価するために,局所対立仮説の下で検定統計量に対する摂動展開を導出した.検出力に対する近似を構成する目的でMCARでない下で検定統計量の極限分布を求めることをめざしたが想定以上に困難であったため,検定統計量の漸近的なモーメントと近似分布のモーメントを一致させることによって得られる近似の構成に着手した.本年度は漸近1次モーメントを導出し,簡易的に利用可能な近似の構成に成功している. 研究2.2-step単調欠測データに基づく線形判別分析における冗長性検定 判別に寄与しない一部の変数を解析対象から除外することにより単純な線形判別関数を構成することができる場合があるため,仮定しているデータの下で線形判別分析における一部の変数の冗長性検定の構成に取り組み,尤度比検定を導出した.ただし,多変量正規性の下でも十分に議論がなされていなかったため,多変量正規性を仮定した下で結果の導出を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は平均ベクトルに関する尤度比検定統計量について,本研究課題の仮定の下で極限分布を求めるに至らなかった.一方,判別分析に関する研究課題については研究計画の変更があったものの,進捗状況は概ね予定通りであったことから,以上の進捗状況に関する自己評価を与えることとした.
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今後の研究の推進方策 |
平均ベクトルに関する尤度比検定統計量に対しては,引き続き,局所対立仮説の下で検定統計量の極限分布,あるいは漸近2次モーメントを導出し,より高精度に機能する検出力に対する近似の構成をめざす.また,判別分析における冗長性検定については,検定統計量だけでなく変数選択規準の構成の可能性も含めて,本研究課題において貢献度の高い研究成果の導出に取り組む予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)2020年11月に開催された日本計算機統計学会 第34回シンポジウムにおいて学会発表を行い,学会会場で周辺分野の研究者との意見交換や研究動向の調査を行う計画であったが,新型コロナウイルス(COVID-19)感染防止対策のため,学会自体がオンライン開催となった.そのため,当該学会の旅費に充てる予定であった金額が次年度使用額となっている. (次年度使用計画)主に,大規模なモンテカルロ・シミュレーションに耐えうる性能を有するノートパソコンの購入費用,研究を行うにあたって必要となる端末の購入費用,論文作成のための英文校正費用,学会が対面形式で開催される場合はその出張旅費に充てる予定である.
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