研究課題/領域番号 |
19K14598
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
江夏 洋一 東京理科大学, 教養教育研究院 北海道・長万部キャンパス教養部, 講師 (90726910)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 微分方程式 / 自由境界問題 / 被食者-捕食者モデル / 時間遅れ / 安定性 |
研究実績の概要 |
本年度においても,個体数の増加に伴う相互協力による採餌の円滑化を考慮した,一捕食者あたりの捕食量が被食者数および捕食者数の双方に依存するような被食者-捕食者モデルの平衡点の個数や安定性に関する分岐構造の研究を継続した.昨年度においては,協力係数を軸の一つとするパラメータ領域における解の漸近挙動の分類への解析的な検証を行っていた.その検証の過程で,共存平衡点が2つ存在するような環境収容定数が小さい場合においては,解の漸近挙動が明らかでなかった.当該年度では,共存平衡点の存在個数が1つから2つに変化する際に,共存平衡点がサドルノード分岐を引き起こすような協力係数と環境収容定数の組を具体的に与えることができた.実際は,個体間協力に伴って採餌がスムーズになるほど捕食の成功率は上がるが,協力に加わる個体数が多くなると,1頭あたりの捕食量は少なくなることも考えられる.共存平衡点の分岐現象に着目しながら,こうした場合を考慮したモデルやその個体群動態についても,今後の課題としている.
感染症の流行を記述した自由境界問題における進行波の存在・非存在に関する研究も引き続き進めており,解析の見通しを良くするための数値計算を並行している.感受性個体の空間拡散を考慮しない場合においては,時間と空間の刻み幅を一定条件の下で小さくするごとに,感受性保持者と感染者の数に対応する解の空間伝播速度が一定の値に近づくことが観察された.この値と連続モデルの semi-wave の速度との比較,数値計算での差分スキームの妥当性への考察をはじめ,感受性個体の空間拡散を考慮した場合の進行波の存在・非存在についても,今後の課題として解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
捕食者間の協力に基づく採餌行動を考慮した被食者-捕食者モデルにおいては,predator-free な平衡点と共存平衡点の個数変化に加えて,分岐パラメータを被食者の内的自然増加率とすることで,共存平衡点の分岐現象にまで具体的に言及できた.さらに,感染症の流行を記述した自由境界問題においても,数値計算によって,進行波の存在・非存在と感染者の無限遠方への空間伝播の有無との対応が視覚的に確認できるようになった.この実験的な検証は感受性個体の空間拡散を考慮した場合にも適用できるため,解析の見通しが良くなった.以上の点で,本研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
捕食者間の協力に基づく採餌行動を考慮した被食者-捕食者モデルにおいては,環境収容定数が小さい条件の下で,共存平衡点がサドルノード分岐を引き起こすような協力係数と環境収容定数の組を具体的に与えることができた.次年度においては,まず共存平衡点の存在個数が1つから2つに変化するすべての場合において平衡点の安定性がどのように切り替わるかについて,解析の見通しを立ててゆきたい.
感染症の流行を記述した自由境界問題においても,昨年度の推進方策として検討していた数値計算も順調に行えている.数値計算での差分スキームの妥当性を常に吟味しながら,各個体の拡散係数や回復率,感染伝達係数などの連続モデルの各パラメータが進行波の存在・非存在に与える影響を引き続き調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国内外の学会や研究集会への参加形態がすべてオンラインとなったことで,現地へ出向くための費用や参加費等が不要となった.そのため,今年度割り当てられた額を当初の計画に沿って使用することが出来なかった.学会や研究集会での成果発表に関しては次年度においても行う予定であり,自由境界問題や被食者-捕食者モデルといった数理生物モデルの数値計算を高速に行うためのワークステーション購入などを検討している.
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