本研究課題では、非対称性のリソース理論(resource theory of asymmetry)に基づいて、測定や操作の原理的限界を求める研究を計画し、実行した。研究機関を通して、当初の計画をはるかに上回る成果を得ることができたと考えている。これは具体的には以下の成果があげられる。 ・まず、当初の目的であるWigner-Araki-Yanase定理の拡張を行い、保存則の下での測定と量子計算ゲートのコストを完全に特定することに成功した。さらに、このWAY定理と、Eastin-Knill定理と呼ばれる誤り訂正符号に対する対称性からの制限を統一し、対称性・不可逆性・量子性の間の統一的制限を得ることにも成功した。この結果は、当初の予定を超えて、ブラックホールや量子熱力学にも適用ができる非常に広範な成果である。 ・Resource theory of asymmetryを大きく拡張し、non-iidと呼ばれるクラスの理論を、U(1)対称性について、純粋状態変換に関して完全に完成した。 この様な成果により、期間中にtop conferenceであるQIPにtalk acceptされた他、PRL3本、多数の招待講演(うち一つはAPS march meeting)、及び新聞記事4件の成果を得ることができた。また、この課題の成果によって日本物理学会領域11の若手奨励賞を受賞した。 最終年度は、コロナ禍によって思うように海外出張に行けなくなったこと、予定より論文のpublishが後ろ倒しになったことから、一年延長を申請した。予定通り、複数の論文をPRLおよびquantumからpublishし、そのうちのquantumとPRL一つのopen access feeを本研究費から支出した。
|