研究課題/領域番号 |
19K14613
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
高邉 賢史 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60804218)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 情報統計力学 / ランダムグラフ / ランダム幾何グラフ / アドホックネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究で扱うランダム幾何グラフはユークリッド空間上の点過程によってノードが設置され,ノード間の距離に応じた確率でランダムに辺が生成されるランダムグラフアンサンブルを指す.ランダム幾何グラフは工学上のアドホック無線センサネットワークや感染症モデル等の実空間上のモデル化において重要なランダムグラフのクラスであり,本研究ではランダム幾何グラフに対する統計力学的な近似手法の開発を目指す.特に,従来研究されてきたハードディスクモデル(一定の距離内の2点間には辺を設置し,そうでない場合は辺を設置しないモデル)を超えて辺の接続確率が一般的な関数形で与えられている場合である一般化ランダム幾何グラフと呼ばれる広いクラスのランダム幾何グラフのアンサンブルを対象とした研究を推進する. 本年度はランダム幾何グラフの基本的な性質である次数相関についての検討をさらに進め,クラスタリング係数と呼ばれるランダムな3点が接続される確率に関して平均場近似に基づく近似式を導出した.これはモデルの並進対称性と点過程の領域の境界効果を無視する近似に基づいており,次数相関やクラスタリング係数に関してモデルの接続確率関数についての半解析的な表式が得られている. また,無線通信に関連した一般化ランダム幾何グラフのモデルであるSISOモデルやMIMOモデルに対する数値計算を行い,導出した近似式がよい精度でランダムグラフのふるまいを説明することを確認した.この成果は物理学会にて発表し,現在物理系の英語論文誌にて投稿中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本テーマに関して論文投稿中であり全体的な進捗は問題なく進行している.今後は得られた知見をもとにランダム幾何グラフ上の各種数理モデルの解析を進める.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度までで得られた知見は確率伝播法等のランダムグラフ上の平均場近似の近似精度を向上させるために重要な情報であり,これをもとにランダム幾何グラフ上の各種数理モデルの解析を進めることで,従来よりもより高精度の近似式の導出およびより詳細な相転移現象の理解につながると期待される.
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍に伴い国際・国内会議への出席と旅費が低減したため.繰り越した研究費は成果のオープンアクセス化やより計算能力の高い計算機資源への投資に充てる予定である.
|