熱揺らぎの影響を受けない程度の大きさを持ち、散逸的な相互作用をする粉粒体は、動的な秩序を形成することがある。例えば、異なる大きさを持つ二種類の粉粒体の混合物を斜面に流すなどの機械的搖動を加えると、異なる粒子ごとに分離し、パターン形成をする。しかし、このような粉粒体の相分離現象の一般的なメカニズム、現象を支配するパラメーターは共に分かっていない。本研究では粉粒体の相分離現象の水平加振実験系を構築し、非侵襲な内部測定を行うことで、粉粒体の相分離による構造形成のメカニズムの解明を目指した。本研究により、水平加振の振動数・粒子の粒径比を変えることで、バンド未形成、バンドの生成消滅、分裂するバンド、ストライプ状のバンドへとパターンが分岐することが分かった。また、明確な相分離パターンを形成するには大きい粒子の流動性が、小さい粒子よりも低い必要があることが分かった。今回用いた大粒子の流動性を測定した結果、流動性は周波数の変化に対し非常に強いヒステリシスを持ち、ヒステリシス領域とパターンが現れる条件が一致することが分かった。以上の実験結果に基づき、2種類の粒子の数密度と粒子集団の流動状態の二つを変数と置いた、現象論的なパターン形成のモデルを考案した。ここでは、深さ方向への相分離による流動層中の粒子密度の変化と、大粒子が持つ流動性のヒステリシスによる流動状態の変化を考慮している。その結果、相分離の強さを表すパラメーターを変えることで、定常パターンから振動パターンを通して分裂パターンへと分岐する結果が得られ、実験結果を定性的に再現することが出来た。本研究により、水平加振による相分離パターンは、粉体の偏析、表面流、流動性が相互作用することにより現れることが分かった。今回の結果は、回転ドラムにおけるバンド形成現象のメカニズム解明にもつながると期待される。
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