| 研究課題/領域番号 |
19K14616
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| 研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
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研究代表者 |
吉井 涼輔 山陽小野田市立山口東京理科大学, 共通教育センター, 講師 (30632517)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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| キーワード | Casimir効果 / 多体効果 / 境界効果 / 非一様解 / 非平衡系 |
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| 研究実績の概要 |
本研究課題では形状効果(境界条件、次元など)と背景場の性質という2つの軸に加えて、場の相互作用による影響という3つ目の軸を加え、Casimir力の統括的理解に至ることを目的としている。また、相互作用によるCasimir力の制御方法の理解についても目的としている。2022年度は以下について研究を進めた。【(1) 相転移のCasimir力による検出のより詳細な解析】磁場を印加した超伝導系を考えると、非一様な超伝導オーダーパラメータが現れる。去年度、空間的に変調した解に対し、その空間変調パターンの変化(1次転移)がCasimir力の飛びとして検出可能である事を示し、具体的にリング状の超伝導体や障壁に挟まれた超伝導について解析を行い、他の物理量などの統括的な解析を行った。論文執筆に向け、常伝導状態に関する解析も追加して行っている。また、内部自由度の影響を調べるため、Grassmannモデルに関する解析も行っている。【(2) 相互作用フェルミ系における非一様解のAdS/CFT 対応による解析】境界や外場がある状況では非一様なオーダーパラメータが生じることがあり、それに応じて非自明なCasimir力の創発が期待される。そのような状況に対して、Casimir効果を系統的に調べるには、非常に相互作用が強い場合や非平衡の場合への拡張が必要であり、さらに現実の実験系と比べるためには 有限温度の効果も取り入れる必要がある。Holographic超伝導の方法はその解決方法のひとつであるが、これまでに非一様な解の有限サイズや磁場などによる創発現象はこの手法ではなされていなかった。本年度は特に電流が生じてる状況における解析を行った。この研究に関しては今年度の投稿を目指している。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年4月に報告者の所属の異動から2年経ち、研究環境の再構築も概ね完了したが、新たに担当する業務等が生じ、研究の進捗に遅れが生じた。また、共同研究者の異動などもあり、議論などを円滑に進める事が出来なかった。 2022年度は、量子多体系を解析する方法の進展が多数あり、研究はやや遅れているものの概ね順調に進展している。これに関連して、2022年度は量子多体系を取り扱う手法に関する論文を数本投稿し、うち3本が掲載された。しかしこれらの研究はカシミール効果の解析に入る前段階の理論的な準備段階に相当するため、(2)ではなく(3)のやや遅れているを選んだ。
具体的には、非平衡系での量子多体系を扱う手法、2次元の周期ポテンシャル内での相互作用ボソン系における解析的な取り扱いの方法、数値計算における計算コストの大幅な削減方法に関する進展があった。また、量子多体系に関するパラメータ変調に関連した非平衡統計力学のサイドからのアプローチにも進展があった。
今後これらの手法を応用し、Casimir効果の詳細かつ多角的な解析に進む予定である。 Casimir力の応用の一例である、超伝導系における相転移をCasimir力の変化という力学的な量の変化に読み替えて検出する方法に関する研究については超伝導状態に加え、常伝導状態の解析も加え、引き続き投稿論文を執筆中である。この追加により、当初の予定より少し研究が遅れている状況である点からも(3)のやや遅れているに該当する。この論文については今年度中の論文の投稿を目指している。
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| 今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、相互作用系におけるCasimir力について、相互作用フェルミ系・ボース系における相互作用の影響を明らかにして来た。また、AdS/CFTの方法 の援用により、強結合超伝導系での非一様な解の構成とカレントの存在下での解析方法の構築も行なってきた。今後はこれらの手法や知見を発展させ、去年度に 引き続き以下のように研究を広げていく。
【(1) パラメータ変調のある状況でのCasimir効果と熱力学】去年度の研究を通して、パラメータ変調のある量子多体系の取り扱いとその熱力学的な理論の構築に関する大きな進展があった。この枠組みにCasimir効果を取り入れた際に熱力学にどのような変更があるか、また、Casimir力による境界条件などの時間変化に由来した熱機関の実現可能性などに関して統括的に調べていく。そのため、まず外場制御による境界(不純物)の位置の制御や、 Casimir-ピストンの実現方法の提案を行い、その熱効率などを調べる。
【(2) Casimir効果による多体状態の観測】これまでの研究実績で挙げた、Casimir効果による相転移の検出に関して、現在論文を執筆中であるため、この完成と投稿を目指す。さらにその拡張として、近藤効果における近藤遮蔽雲やボース系における巨視的波動関数の大きさのような量子多体効果の特徴的なサイズが生じ る状況で、そのサイズをCasimir力の変化で検出する ことが可能か調べる。
【(3) 非平衡系における量子多体系とCasimir効果】これまで、AdS/CFT対応を用いて非平衡量子多体系の非一様解などを求めてきたが、この手法ではカレントを簡単に導入できるため、これを用いてカレントの存在下でのCasimir効果について解析を行っていく。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で国際会議への参加が困難であったため。
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