研究実績の概要 |
令和3年度における研究実績は下記の3つである。 まず、一次元のコロイド系におけるダブルレイヤー形成ダイナミクスに関する論文が掲載された(L. Varela, S. Andraus, E. Trizac, G. Tellez, J Phys Condens Matter 33 (2021) 394001)。この論文において、固定されたコロイド2個とブラウン運動を行うイオンN個の時間発展を数値的に研究し、その緩和時間を評価した。Nが偶数の場合、各コロイドはN/2個のイオンでスクリーンされ、2つの独立なダブルレイヤーが形成されるので、その場合の緩和時間はコロイド間の距離に依存しないことが分かった。一方、Nが奇数の場合には必ず一つの自由イオンが残り、残りのN-1個のイオンはコロイドのダブルレイヤーを形成する。その時、系の緩和時間は自由イオンが運動する、ダブルレイヤー間の距離の二乗に比例することを発見した。 次に、氷結極限におけるランダム行列固有値のゆらぎ分布とデュアル多項式に関する論文が掲載された(S. Andraus, K. Hermann, M. Voit, J Math Phys 62 (2021) 083303)。この論文では、ランダム行列アンサンブルの低温極限における固有値分布のガウス型ゆらぎを研究し、そのゆらぎを特徴づける共分散行列の新しい具体形を発見した。その導出のためにde Boor-Saffデュアリティという概念を利用し、以前に知られていなかったヤコビアンサンブルの場合の共分散行列も発見した。 最後に、Log-gasにおける粒子の衝突時刻のフラクタル次元に関する研究をプレプリントにまとめた(arXiv:2109.08707)。以前のダンクルジャンプ過程の研究では粒子衝突が発生するときにジャンプの記述が知られていないことを踏まえて、衝突自体の性質を研究した。その結果、衝突時刻にフラクタル構造があることを示し、フラクタル次元は秩序パラメーターに似た振る舞いを示すことを発見した。
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