ナノ電子プローブを用いた収束電子回折法による,界面誘起分極構造の解析を目的とし,ビームロッキング機構の導入,界面からの収束電子回折に取得およびその解析を行った. ビームロッキング機構を用いたデータ取得に先立ち,晶帯軸入射データとビーム傾斜による各反射励起条件でのデータを用いた場合の解析精度の実験的な比較を行い,精度の差異の原因について明らかにした.テスト試料としてペロブスカイト型構造を示すKTaO3を用いて,晶帯軸入射の3方位を同時に解析に用いた場合と、ビーム傾斜によりそれぞれ異なる5つの反射を励起条件にした5データを同時に解析に用いた場合の解析精度を評価した.また,それぞれの実験条件においての結晶構造因子の変化に対する感度を評価し,解析精度と感度が常に一対一対応するわけではなく,入射方位やビームロッキング条件に依存することが明らかになった.解析精度は各精密化パラメータの相関に強く依存していることが分かり,ビームロッキング時にはこの相関が効果的に抑制されていることが明らかになった. 界面誘起分極構造として,CaTiO3の(110)双晶の解析を行った.ナノ電子プローブを試料面上でスキャンし,各プローブ位置での収束電子回折図形を取得した.これによって初めて,収束電子回折図形の対称性変化の空間分布が明らかになった.異なる試料片において,双晶特有の対称性の破れに有意な差異が観察され,また双晶境界の幅にも違いが観察された.ドメイン壁における単位胞を定義し,実験と計算強度の定量比較から結晶構造の精密化を行い,界面における結晶構造を求めた.ただし,まだ解析精度は十分でなく,超構造を考慮した解析プログラムの開発が求められるほか,異なる界面構造についての解析も継続して行う必要がある.
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