研究課題
今年度は、昨年構築したピエゾ効果を用いた高次高調波発生の理論をグラフェンに適用することで、これまでに知られていなかった新たな光学応答の特性を示すことに成功した。具体的には剪断応力を印加したグラフェンにおける光学応答は、線形応答成分と非線形応答成分で異なる方位角依存性を示すことを理論的に実証した。これらの傾向を解析するために研究代表者は、グラフェンにおける屈折係数と吸収係数に着目し、これらが剪断応力に対しどのような依存性を示すのかを久保公式を用いて考察した。その結果、屈折係数と吸収係数は、それぞれ線形応答及び非線形応答成分と同様の方位角依存性を示すということを発見した。加えてこれらの傾向が、グラフェンにおける双極子の剪断応力に対する変化を反映した結果生じるものであるということも示した。以上の考察に基けば、高次高調波の方位角依存性は、屈折係数と吸収係数の寄与のどちらが支配的になるかで変化するものと期待される。この考えを実証するために、研究代表者は、剪断応力を16%以上印加したバンドギャップが生じたグラフェンにおける高次高調波の方位角依存性の数値計算を行なった。このバンドギャップの存在は吸収係数の寄与を抑制するため、これまで吸収係数による寄与が支配的であった高次の高調波成分における方位角依存性を変化させるものと期待される。数値計算の結果、確かに予想通り、高調波の高次成分において吸収係数から屈折係数の方位角依存性へのクロスオーバーが確認できた。本成果をまとめた論文は現在執筆中であり、近日中に海外学術誌に投稿予定となっている。
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Physical Review B
巻: 104 ページ: L121202
10.1103/PhysRevB.104.L121202