研究課題
本研究はGaAs製のフォトニック結晶共振器の共振モードと、共振器内の二準位系の強結合状態を実現し、さらにガラス埋め込みされた光導波路を経由して供給されるレーザー光により共鳴的な励起を行うことで結合強度の増強を狙うものである。その第一歩として、まずフォトニック結晶共振器と二準位系の強結合状態を実証する必要がある。我々はフォトニック結晶ナノビーム共振器とその中に埋め込まれた自己形成量子ドットを作製し、これを顕微分光法により評価した。その結果、量子ドットとフォトニック結晶共振器の結合レートがそれぞれのロスレートを上回ることが確認され、強結合状態の実証に成功したといえる。また、上記の実験では試験的にCMOSプロセスにより作成された光導波路上にGaAs製の量子ドット-フォトニック結晶共振器強結合系を集積した。この異種集積は転写プリントによるものであり、転写プリントがシリコンフォトニクスとGaAs系半導体による量子光学素子を融合させることができることをも実証した。この成果は集積量子光回路の分野ではインパクトが大きいと判断し、成果をPhysical Review Applied誌に投稿し受理された[A. Osada et al., Phys. Rev. Applied 11, 024071 (2019)に掲載済み]。以上の成果は次年度に開発する予定である、光導波路により供給されたレーザー光による量子光学素子の共鳴的励起の手法の開発と併せて本研究達成、ひいては集積量子光回路の発展にとって重要な要素技術である。
2: おおむね順調に進展している
初年度にはGaAs製のフォトニック結晶共振器の共振モードと、共振器内の二準位系の強結合状態を実現し、さらに次年度でガラス埋め込みされた光導波路を経由して供給されるレーザー光により共鳴的な励起を行うという計画で研究を進めているが、初年度は予定どおりフォトニック結晶ナノビーム共振器とその中に埋め込まれた自己形成量子ドットの強結合系の実現に成功した。また、シリコン導波路上へのGaAs製共振器量子電気力学素子の集積という新奇性の高い成果が応用物理系でも最高峰のPhys. Rev. Applied誌に掲載された。初年度末ごろには次年度の準備にも取り掛かることができ、おおむね順調であるといえる。
2020年度はまずガラス埋め込みされた光導波路を経由して供給されるレーザー光により共鳴的な励起を行うことで、研究目的の達成への足掛かりとする。そのための光学系の構築はすでに初年度末から始めており、順調に進行している。まずガラス埋め込みされた光導波路の作製であるが、大きく分けて光導波路の作製のためのプラズマエッチングの条件出し、および埋め込み膜厚を含めたガラス埋め込みのプロセス開発を行う。光導波路端にグレーティングを配置し、顕微分光により共鳴レーザーの供給に評価する。また、ガラス埋め込みされた光導波路上に実際に量子ドット素子を転写プリントにより集積し、実際に共鳴的な冷機の実証を行う。以上がうまくいった暁には初年度の成果であるフォトニック結晶共振器の共振モードと、共振器内の量子ドットの強結合系と共鳴励起用の光導波路を組み合わせ、本研究目的の達成を狙う。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Phys Rev Applied
巻: 11 ページ: 024071
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