これまでの研究から、時間分解光電子分光法を用いることで超短パルスによって励起された太陽電池に瞬間的に生じる光起電力の時間変化を測定できることを明らかにしていたが、それが太陽電池内部の光キャリアの運動とどのように関係するのかはわかっていなかった。 そこで、連続の式を用いた数値計算を行い、①弱励起極限での電圧の立ち上がり時間は擬中性層でのキャリアの拡散時間に対応していること、②弱~中強度励起下での電圧の減衰はキャリア寿命の指数関数になること、③強励起下では空乏層の飽和により電圧の減衰はキャリア寿命の指数関数減衰にならないこと、を明らかにした。さらに、発光減衰についても数値計算を行い、発光と電圧の時間変化がどのような対応関係を持つのかを調べた。その結果、進行研究において指摘されていたように、①弱励起下での強励起下での発光減衰は擬中性層でのキャリアの拡散時間に対応すること、②強励起極限での発光減衰はキャリア寿命に対応すること、が確認された。その上で、電圧と発光のダイナムクスの間に非自明な関係が存在することを明らかにした。すなわち、電圧をボルツマン因子で割った値の指数関数を取ったものが発光と同じ時間変化を示すことが分かった。これは、強励起下で準平衡状態が成立していることを意味している。 また、時間分解光電子分光測定において観測される起電力の最大値が本来予測される値よりも小さい点についても検証した。その結果、太陽電池の表面に薄い金を蒸着することで予測される最大値が観測されることが明らかになった。
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